投稿日:2022/11/16
更新日:2024/11/19
でんきの豆知識
FIT制度とは、再生可能エネルギー(再エネ)から作った電気を一定期間、固定価格で買い取ることを国が約束する制度です。太陽光発電設備の設置や売電をお考えの方なら、一度は聞いたことがあるでしょう。FIT制度を利用するなら、最新の売電価格やFIT制度の申請期限を確認しておくことが大切です。
本記事では、2024年度(令和6年度)の売電価格とFIT制度の申請方法、売電収入や電気料金の節約効果を高める方法を解説します。また2024年4月以降にFIT制度の期間満了を迎える方へ向けて、卒FIT後の売電価格もご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2024年3月25日時点の情報です
目次
FIT制度における、2024年度(令和6年度)の太陽光発電の売電価格は、9.2〜16円/kWhです。2025年度(令和7年度)は、8.9〜15円/kWhとなる予定です。
太陽光発電の売電価格は、発電設備の規模によって異なります。設備の規模別の2014年度から2025年度までの売電価格の推移は、以下のとおりです。
【売電価格の推移】
年度 | 10kW未満の売電価格(/kWh) | 10〜50kWの売電価格(/kWh) | 50〜250kWの売電価格(/kWh) |
---|---|---|---|
2025年 | 15円 | 10円 | 8.9円 |
2024年 | 16円 | 10円 | 9.2円 |
2023年 | 16円 | 10円 | 9.5円 |
2022年 | 17円 | 11円 | 10円 |
2021年 | 19円 | 12円 | 11円 |
2020年 | 21円 | 13円+税 | 12円+税 |
2019年 | 24円(※1)・26円(※2) | 14円+税 | |
2018年 | 26円(※1)・28円(※2) | 18円+税 | |
2017年 | 28円(※1)・30円(※2) | 21円+税 | |
2016年 | 31円(※1)・33円(※2) | 24円+税 | |
2015年 | 33円(※1)・35円(※2) | 29円+税(4/1~6/30)
27円+税(7/1~) |
|
2014年 | 37円 | 32円+税 |
※1 出力制御対応機器設置義務なし
※2 出力制御対応機器設置義務あり
売電価格は年々下がっており、例えば、一般住宅で主に用いられる10kW未満の太陽光発電は、2016年から2025年までの10年間で16~18円/kWh下がっています。
売電価格が下がっている背景として、太陽光発電設備の設置にかかる初期費用の低価格化が挙げられます。
現在では太陽光発電が普及し、大量生産が可能となったため、発電設備の価格が安くなりました。また多くの人が太陽光発電を利用するようになったため設置工事が効率化され、施行単価が下がっています。製品価格と工事費用が安くなり、結果として以前よりも太陽光発電を導入しやすくなったのです。
売電価格は下がったものの、太陽光発電設備の導入にかかるコストも下がったため、初期費用の回収期間はFIT制度の導入当初と大きく変わらないでしょう。
太陽光発電による売電収入は、理論上、売電単価(円) × 発電量(kWh)の計算式で算出できます。例えば、2024年度にFIT制度の適用を申請した場合の売電単価は、16円/kWhです。発電量は使用する太陽光発電のシステムや、パネルを設置した場所の日射量などによって左右されます。
例として、東京駅の年間発電量を計算すると以下のようになります。
【条件】
日射量は地域によって差があるため、年平均日射量を使用します。また一般家庭では3~5kWの太陽光発電システムが主流のため、システム容量を5kWとします。年間発電量の計算式は以下のとおりです。
年間予想発電量(kWh/年) = 設置面の1日あたりの年平均日射量(kWh/㎡/日) × 損失係数(0.8) × システム容量(kW) × 365 ÷ 1(標準状態における日射強度kW/㎡) |
上記の計算式を使用し、東京駅を例に年間発電量を計算すると以下のようになります。
年間予想発電量 = 3.75(kWh/㎡) × 0.8 × 5(kW) × 365(日) ÷ 1(kW/㎡) = 5,475(kWh/年)
10kW未満の太陽光発電は、自家消費をして余った分を売る余剰売電のみがFIT制度の対象となっています。そのため売電収入を計算するには、先ほど算出した年間発電量の5,475kWhから、自家消費分を除かなければなりません。
自家消費率を一般水準の30%とすると、自家消費分と売電分はそれぞれ以下のようになります。
自家消費分 = 5,475(kWh) × 30% = 1,642.5(kWh)
売電分 = 5,475(kWh) − 1,642.5(kWh) = 3,832.5(kWh)
先述した売電収入を求める計算式に当てはめると、2024年度の太陽光発電による売電収入は、以下のとおりです。
1年間の売電収入 = 16(円) × 3,832.5(kWh) = 61,320円
東京駅と同等の年平均日射量がある地域なら、太陽光発電による1年間の売電収入はおよそ61,320円となります。
ここからさらに、電気料金の節約効果を求めてみましょう。まず、年間の電気料金を算出します。計算式は以下のとおりです。
年間の電気料金=年間平均電気使用量×料金単価 |
年間平均電気使用量を3,950kWhとし、利用する電気料金の単価を36.40円/kWh(東京電力従量電灯B第2段階料金)とします。上記の式に当てはめると、年間の電気料金は以下のとおりです。
年間の電気料金 = 3,950(kWh) × 36.40(円) = 143,780円
続いて、自家消費による節約分を求めます。自家消費分は先ほど算出した通り1,642.5(kWh)なので、自家消費によって節約できる金額は、以下のようになります。
自家消費による節約額 = 1,642.5(kWh) × 36.40(円) = 59,787円
年間の電気料金143,780円から、自家消費による節約分と売電収入を差し引くと、以下のようになります。
FIT制度適用後の年間の電気料金(実質) = 143,780(円) – 59,787(円) – 61,320(円) = 22,673円
太陽光発電設備を導入してFIT制度を適用した場合、年間143,780円かかるはずの電気料金を、実質22,673円まで節約することが可能です。
2024年度(令和6年度)のFIT制度申請期限はまだ公式発表されていませんが、過去の申請期限を見ればおおよその時期を予想可能です。電力会社への申請期限、経済産業省への申請期限について想定される目安を解説します。
※2024年度のFIT制度申請期限が正式に発表され次第、情報を更新します
電力会社への申請期限はそれぞれ異なるため、発電場所を管轄するエリア電力会社の情報を確認しましょう。2024年度(令和6年度)の各電力会社への申請期限はまだ発表されていません。2023年の傾向を見ると、いずれの電力会社であってもFIT制度の申請期限を10月上旬〜11月上旬頃に設定しています。例えば東京電力の場合、2023年度は10kW未満の〆切が2023年11月10日、10~50kW未満の〆切が2023年10月13日でした。
そのため2024年度も、同様の時期に期限が設けられる可能性が高いでしょう。電力会社への申請期限が正式に発表され次第、情報を更新します。
【2024年度の電力会社への申請期限】
エリア電力会社 | 10kW未満 | 10~50kW未満 |
---|---|---|
東京電力 | 未発表 | 未発表 |
北海道電力 | 未発表 | 未発表 |
東北電力 | 未発表 | 未発表 |
中部電力 | 未発表 | 未発表 |
北陸電力 | 未発表 | 未発表 |
関西電力 | 未発表 | 未発表 |
中国電力 | 未発表 | 未発表 |
四国電力 | 未発表 | 未発表 |
九州電力 | 未発表 | 未発表 |
沖縄電力 | 未発表 | 未発表 |
2024年度(令和6年度)の経済産業省への申請期限もまだ発表されていませんが、2023年度の期限から予測が可能です。2023年度は、10kW未満の〆切は2024年1月5日、10kW以上の〆切は2023年12月15日でした。そのため2024年度の申請期限も、10kW未満なら2025年1月上旬頃、10kW以上なら2024年12月中旬頃となるでしょう。
こちらも経済産業省への申請期限が正式に発表され次第、情報を更新します。
10kW未満 | 10~50kW未満 | |
---|---|---|
経済産業省 | 未発表 | 未発表 |
FIT制度申請の流れは、設備販売業者との契約、電力会社への申請、経済産業省への申請と大きく3段階に分けられます。まずは太陽光発電設備の販売業者に問い合わせ、必要書類を提出した上で承諾を得て、太陽光発電設備の売買契約を締結してください。
太陽光発電設備の購入には、販売業者による設置場所の現地調査が必要で、見積もりに時間がかかる場合があります。販売業者によっても異なりますが、売買契約が完了するまでには2~4週間程度かかると見積もっておきましょう。
次に電力会社への申請に取り掛かります。申請から接続契約の締結までには、電力会社によっても異なりますが1~2カ月程度かかります。
最後に経済産業省へ設備認定を申請してください。こちらも申請から完了までに1〜2カ月程度かかります。
FIT制度の申請の際は、経済産業省への申請期限を守る必要があります。申請期日までに手続き完了とならなかった場合は、2024年度中の申請とみなされないため注意しましょう。2025年度の申請となると、10kW未満の場合、売電価格が1円下がります。間に合わせるためには、経済産業省への申請期限から逆算して、設備販売業者との契約や電力会社への申請を行うことが大切です。申請期限の直前に慌ててしまわないよう、太陽光発電設備の導入は計画的に進めましょう。
FIT制度による売電期間は10年です。FIT制度の満了を迎えると卒FITと呼ばれます。
太陽光発電を導入するならFIT制度適用期間の売電価格だけでなく、卒FIT後の売電価格も知っておく必要があります。エリア別に、大手電力会社の卒FIT後の買取単価とエネクスライフサービスの買取単価、2024年4月以降にFIT制度の満了を迎える方のFIT制度適用期間の売電価格である「2014年の売電価格」をまとめてみました。
【売電価格の比較表】
エリア | 直近のエリア電力会社の買取単価(/kWh) | エネクスライフサービスの買取単価(/kWh) | 2014年の売電価格(FIT制度)(/kWh) |
---|---|---|---|
関東エリア | 8.5円(東京電力) | 12.5円 | 37円 |
北海道エリア | 8円(北海道電力) | 11円 | |
東北エリア | 9円(東北電力) | 10円 | |
中部エリア | 7円(中部電力) | 10.5円 | |
北陸エリア | 8円(北陸電力) | 8.5円 | |
関西エリア | 8円(関西電力) | 10円 | |
中国エリア | 7.15円(中国電力) | 10円 | |
四国エリア | 7円(四国電力) | 8.5円 | |
九州エリア | 7円(九州電力) | 7.1円 | |
沖縄エリア | 7.7円(沖縄電力) | – |
電力会社の買取単価は7〜9円程度です。一方、エネクスライフサービスの買取単価は8〜14.5円です。卒FITのタイミングで売電先エネクスライフサービスに切り替えると、大手電力会社への売電を継続するよりも、売電収入を増やせるでしょう。
卒FIT後は売電する事業者を任意で決められるため、売電価格や契約内容を比較してメリットが大きい事業者を選ぶことが大切です。また大手電力会社への売電を継続したり、他の事業者に乗り換えたりする以外に、蓄電池などを設置して自家消費を増やすという方法もあります。
>卒FITとは? 卒FIT後の3つの選択肢について詳しく解説!
※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 .https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .
卒FITを迎えると売電価格は下落します。FIT制度適用期間中の売電価格が高いのは、電気の買い取りに再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が充てられているためです。
再エネ賦課金とは、電気を使用する全ての家庭や企業が、電気使用量に応じて負担しているものです。再エネ賦課金を徴収し、電力会社がFIT制度で電力を買い取る際に要する費用を賄うことで、再エネ由来の電力の普及を促進させる仕組みとなっています。
卒FIT後は再エネ賦課金の割り当てがなくなるため、買取価格が下がるのです。
FIT制度の適用期間だけでなく、卒FITを迎えた後もある程度の売電収入を得られるのか、電気料金の節約に役立つのか気になる方も多いのではないでしょうか。卒FIT後の太陽光発電の売電収入や電気料金の節約効果の目安を、先ほど算出した数字を用いて解説します。
【条件】
【2024年4月以降卒FITの方のFIT期間中の1年間の売電収入】
1年間の売電収入 = 2014年度FIT制度の売電単価(10kWh未満)37(円) × 3,832.5(kWh) = 141,802円(1円未満切り捨て)
【売電継続した場合の卒FIT後の売電収入】
1年間の売電収入 = 卒FIT後の東京電力の買取単価8.5(円) × 3,832.5(kWh) = 32,576円(1円未満切り捨て)
【エネクスライフサービスで売電した場合の卒FIT後の売電収入】
1年間の売電収入 = エネクスライフサービスの買取単価12.5(円) × 3,832.5(kWh) = 47,906円(1円未満切り捨て)
【2024年4月以降卒FITの方のFIT期間中の電気料金の節約効果】
FIT制度適用後の年間の電気料金(実質) = 143,780(円) – 59,787(円) – 141,802(円) = -57,809円
【電気料金の節約効果(売電継続)】
卒FIT後の年間の電気料金(実質) = 143,780(円) – 59,787(円) – 32,576(円) = 51,417円
【電気料金の節約効果(エネクスライフサービスへ売電)】
卒FIT後の年間の電気料金(実質) = 143,780(円) – 59,787(円) – 47,906(円) = 36,087円
東京電力への売電を継続した場合、実質の電気料金はおよそ51,879円になります。一方、エネクスライフサービスで売電した場合、実質の電気料金がおよそ36,087円にまで下がり大きな節約効果を得られます。卒FIT後の太陽光発電の売電収入や電気料金の節約効果は、売電先によって大きく左右されるといえるでしょう。
太陽光発電の売電収入や電気料金の節約効果はあらゆる要因によって変わります。ここからは、より多くの売電収入や節約効果を得るためポイントを解説します。
売電収入を増やし電気料金の節約効果を高めるには、太陽光パネルの発電効率を上げる必要があります。太陽光パネルを購入する際は発電効率を重視して選んでください。
太陽光パネルを選ぶポイントは素材です。太陽光パネルの素材にはシリコン系、化合物系、有機物系などの種類があり、主流はシリコン系です。例えば、シリコン系の中でも単結晶シリコンパネルは、発電効率がよいといわれています。ただし、太陽光パネル自体の価格も高くなりやすいため、予算に応じて選ぶことも重要です。
また太陽光パネルの設置場所や角度を工夫すれば、発電効率が上がる可能性があります。太陽の光ができるだけたくさん当たるよう、太陽光パネルの置き方を調整してみてください。
住宅用として一般的な出力10kW未満の太陽光発電設備には、定期的な点検は義務付けられていません。しかし、太陽光パネルや周辺機器の定期点検を行うことで、売電収入や節約効果を高められる他、万が一異常や故障が発生した際も、比較的早い段階で発見できます。
代表的なメンテナンスには、太陽光パネルの掃除やパワーコンディショナーの交換などが挙げられます。太陽光パネルは屋外に設置されているためほこりやゴミなどが付きやすく、表面が汚れていると発電効率の低下につながります。またパワーコンディショナーとは、太陽光パネルで作った電気を家庭で使用できる状態に変換する機器です。パワーコンディショナーは太陽光パネルより寿命が短く、気付かないうちに劣化しているかもしれません。劣化すると変換効率が低下してしまうため、一般的な寿命である10〜15年を目安に交換を検討しましょう。
発電効率が低下すれば、当然ながら売電収入や節約効果の低下につながります。またメンテナンスを怠ると機器の故障につながり、経済的な損失が生じてしまうでしょう。
蓄電池とは電気をためたり、供給したりできる二次電池です。蓄電池があれば、太陽光発電で作った電気を蓄えられます。例えば日中に発電した電気を蓄電池にためておくと、電気を作れない夜間や悪天候時にその電気を使用できるため、さらに電気の購入量が減って電気料金の節約につながります。また蓄電池は停電時の備えにもなるため、買っておいて損はないでしょう。
蓄電池の導入には費用がかかりますが、自治体によっては太陽光発電設備や蓄電池の導入の際に補助金を活用できます。補助金に関しては自治体のWebサイトなどで確認してみてください。
先述した通り、FIT制度の期間満了後は自由に売電先を選択できます。卒FIT後の買取単価は、電力会社によって大きく異なるため、より買取単価の高い電力会社へ売電することで収入を増やせるでしょう。
なお大手電力会社よりも、新電力の方が買取単価が高い傾向にあります。買取単価やその他の契約条件を比較して、できるだけ高く売電できる電力会社を選びましょう。
FIT制度における売電価格は年々下落していますが、その分、太陽光発電設備の導入費用も下がっています。2024年度からFIT制度を適用しても、年間61,320円の売電収入を得ることができ、年間121,107円もの電気料金の節約効果を得ることができるというシミュレーション結果から考えると、太陽光発電設備を導入するメリットは現在も変わらず大きいといえるでしょう。
年度が変わると売電価格が1円下がってしまうため、現在、太陽光発電設備の導入を検討している方は、2024年度からFIT制度を適用できるよう、申請期限から逆算して手続きを進めることが大切です。
一方、卒FITを迎えた方で、より多くの売電収入を得たい方は、売電先の変更を検討しましょう。エネクスライフサービスは、高水準の買取価格を実現しています。例えば、関東エリアの買取単価は12.5円/kWh。さらに、TERASELでんきをご利用の場合は、買取単価が1円アップします。卒FIT後の売電先をお探しの方は、ぜひ、エネクスライフサービスの「太陽光電力の買取サービス」をご検討ください。
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