投稿日:2022/11/16
更新日:2024/09/03
でんきの豆知識
FIT制度を利用して太陽光発電による売電収入を得ているなら、早めの段階から卒FITに備えておくことが大切です。卒FIT後は買取単価が下がってしまい、売電収入が大幅に少なくなってしまうからです。
少しでも多くの売電収入を得たいなら、買取単価の高い事業者へ切り替えるのがおすすめですが、売電先を変更することで、どの程度収入が増えるのでしょうか?
本記事では、太陽光発電の発電量や売電収入の計算方法を解説します。ご紹介する計算式を使って売電収入を算出し、どの買取業者に切り替えるべきか比較検討してみましょう。
※本記事の内容は2024年8月時点の情報です
目次
卒FITを迎えると売電価格は下がります。FIT制度適用期間中の売電価格が高いのは、電気の買い取りに再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が充てられているためです。
再エネ賦課金とは、電力会社がFIT制度で再エネ由来の電力を買い取る際に要する費用を賄うもので、電気を使用する全ての家庭や企業が、電気使用量に応じて毎月の電気料金と一緒に支払っています。
卒FIT後は電気の買い取りに再エネ賦課金が充てられなくなるため、売電価格が下がるのです。
2024年2月時点の大手電力会社の卒FIT買取価格と、2013年度のFIT制度の買取価格は、以下のとおりです。
【大手電力会社の卒FIT後の買取価格】
大手電力会社 | 買取単価(/kWh) | 2013年度のFIT制度の買取価格(/kWh) |
---|---|---|
東京電力 | 8.5円 | 38円 |
北海道電力 | 8円 | |
東北電力 | 9円 | |
中部電力 | 7円 | |
北陸電力 | 8円 | |
関西電力 | 8円 | |
中国電力 | 7.15円 | |
四国電力 | 7円 | |
九州電力 | 7円 | |
沖縄電力 | 7.7円 |
大手電力会社の卒FIT買取価格は、2013年度のFIT制度の買取価格と比べて大きく下がっていることが分かります。
例えば、東京電力に1年間で3,000kWhの電気を売電するとしましょう。2013年度からのFIT制度適用期間中なら年間の売電収入は114,000円ですが、卒FIT後は25,500円と大きく下がってしまうのです。
※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .
とはいえ「卒FIT後は売電価格が下がるから、太陽光発電は導入する意味がない」というわけではありません。たとえ卒FITを迎えて売電収入が大幅に減ったとしても、他にもさまざまなメリットがあります。FIT制度が始まってから一定期間が経過した今だからこそいえる、太陽光発電の導入がもたらす主なメリットを3つご紹介します。
太陽光発電でつくった電気を自家消費すれば、その分電力会社からの買電量は少なくなります。理論上はどんなに売電単価が下がっても、自家発電による節約効果には影響しません。また買電量が抑えられていることによって、電気料金が高騰した際の影響が少なくなるでしょう。売電収入が減ったとしても出ていく費用を減らせるため、電気をお得に使い続けられるのです。
2024年現在は世界的なエネルギー危機といわれており、さまざまな要因が重なったことによる電気料金の高騰が続いています。本来であれば安くなるはずの深夜電力も高水準で推移しているため、電力会社から電気を購入すると、割高になってしまう傾向にあります。
また先述した再エネ賦課金の原資は、需要家が負担する買電価格の一部に含まれます。買電量に応じて支払わなければならない再エネ賦課金が年々(※)値上がりをしていることも、電気料金高騰の一因です。
太陽光発電の導入によって卒FIT後も自家消費を続けられると、電気料金の高騰による家計へのダメージを軽減させる効果が期待できるのです。
※2023年度の再エネ賦課金単価は、2022年度の燃料価格高騰の影響により、単年では値下げとなっています
太陽光発電システムは進化が続いており、近年は発電効率がアップした製品が増えています。また製造コストや耐熱性といった、従来の太陽光発電システムが抱えていた課題が改善されたモデルも多いです。以前よりも性能の良いシステムをより低価格で導入でき、さらには長く使える時代になったため、今こそ太陽光発電に高いパフォーマンスが期待できるタイミングといえるでしょう。
システムそのもの以外の点でも、導入のハードルは下がってきています。
例えば、一般的な太陽光発電システムには、導入から一定期間メーカーなどに出力を保障してもらえる「出力保障」が設けられており、最近はその保障期間が長期化の傾向にあります。より長期的な保障を受けられるシステムを選ぶことで、故障リスクを低減させられるでしょう。
その他、国や地方自治体から導入コストの補助を受けられるケースもあるので、うまく利用できれば費用対効果の高い導入が実現します。つくった電気をためておける蓄電池と併用すれば、自家消費できる電気の量が増え、さらなる節約効果も期待できます。
太陽光発電を導入すると、もしものときの備えにもなります。
日本は台風や地震といった災害の発生リスクが高い国であり、近年でも大規模な停電被害が相次いでいます。太陽光発電を導入していれば、停電中も電気を使い続けることが可能です。先述した蓄電池を併用していれば、お互いを補完し合いながら長期間電気を使用することができ、停電が長引いたとしても、電気のある生活を継続できるでしょう。
卒FITを迎えた後は売電先を自由に選べるようになります。FIT制度適用期間中の電気の買取価格は国が定めていますが、卒FIT後の電気の買取価格はそれぞれの事業者が設定しています。各エリアを管轄する大手電力会社よりも、新電力の方が買取単価を高く設定しているケースが多いです。
実際の買取単価にどのくらいの差があるのか、大手電力会社と新電力の買取単価を比較してみましょう。
【買取単価】
エリア | 直近のエリア電力会社の買取単価(/kWh) | エネクスライフサービスの買取単価(/kWh) | 丸紅新電力の買取単価(/kWh) | ENEOSの買取単価(/kWh) |
---|---|---|---|---|
関東エリア | 8.5円(東京電力) | 12.5円 | 11円 | 11円 |
北海道エリア | 8円(北海道電力) | 11円 | 11円 | 11円 |
東北エリア | 9円(東北電力) | 10円 | 11円 | 11円 |
中部エリア | 7円(中部電力) | 10.5円 | 10円 | 10円 |
北陸エリア | 8円(北陸電力) | 8.5円 | 10円 | 10円 |
関西エリア | 8円(関西電力) | 10円 | 10円 | 10円 |
中国エリア | 7.15円(中国電力) | 10円 | 10円 | 10円 |
四国エリア | 7円(四国電力) | 8.5円 | 10円 | 10円 |
九州エリア | 7円(九州電力) | 7.1円 | 9円 | 8円 |
沖縄エリア | 7.7円(沖縄電力) | – | 9.5円 | – |
関東エリアで比較してみると、エネクスライフサービスと東京電力エナジーパートナーでは、買取単価に4円もの差があります。丸紅新電力やENEOSと東京電力エナジーパートナーでも、2.5円の差です。発電量が多いほど売電収入の差は大きくなるので、卒FIT後に少しでも多くの売電収入を得たいなら、売電先の切り替えは必須でしょう。
※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .
※参考:丸紅新電力 . 「卒FIT買取サービス」 . https://marubeni-st.co.jp/lp/sharp , (2024-02-15) .
※参考:ENEOS . 「ENEOS太陽光買取サービス」 . https://www.eneos.co.jp/solar-kaitori/ , (2024-02-15) .
太陽光発電による売電収入は、理論上、売電単価(円) × 発電量(kWh)の計算式で算出できますが、上記の計算をするためには、まず太陽光発電の年間予想発電量を算出しなければなりません。
ここからは、太陽光発電による売電収入の計算方法を解説します。
計算方法の前に、計算で使用する単位について解説します。
kW(キロワット)は電気出力を表す単位です。kは1,000を意味するので、1kW=1,000Wです。例えば電球なら、1Wの電球よりも10Wの電球の方が電気出力が大きく、より明るく照らせます。
太陽光発電におけるkWはソーラーパネルの発電能力を示します。kWの値が大きいほど、多くの電気を作る能力があるということです。住宅で用いられるソーラーパネルは10kW未満と決められており、3~5kWのものが主流となっています。
一方、kWh(キロワットアワー)は電力量を表す単位です。hは1時間を意味し、太陽光発電におけるkWhは、1時間当たりの発電量を示します。例えば100kWの太陽光パネルで1時間発電を続けると、100kWhの電気を得られます(日射量や発電ロスを考慮しない)。
前述したkWとkWhは一字違いなので混同しやすいですが、2つは異なる単位です。kWが電気出力を表す一方、kWhは発電量を表します。電力を流れる水に例えると、kWは一度に流れる水の量、kWhは1時間で流れた水の総量となります。
電力量を求める計算式は、電力(kW) × 時間(h)です。例えば、5kWの太陽光発電パネルで10時間発電した場合、計算式は以下のようになります(日射量や発電ロスを考慮しない)。
電力量(kWh)=5(kW)×10(h)=50(kWh)
電力量を求める計算式は電力(kW) × 時間(h)ですが、実際にソーラーパネルの予想発電量を計算する場合は、設置した地域の日射量や発電ロスなどを考慮して算出する必要があります。
太陽光発電の年間予想発電量の計算式は以下のとおりです。
年間予想発電量(kWh/年) = 設置面の1日あたりの年平均日射量(kWh/㎡/日) × 損失係数(0.8) × システム容量(kW) × 365 ÷ 1(標準状態における日射強度kW/㎡)
上記の計算式を用いて、東京駅の年間予想発電量を計算してみましょう。
【条件】
年間予想発電量 = 3.75(kWh/㎡) × 0.8 × 5(kW) × 365(日) ÷ 1(kW/㎡) = 5,475(kWh/年)
東京駅地点の年間予想発電量は、5,475kWhとなります。
ソーラーパネルの設置場所の日射量を調べるのが手間な方や、より詳細なシミュレーションをしたい方は、メーカーのWebサイトにあるシミュレーションを利用しても良いでしょう。また太陽光発電設備の設置事業者に見積もりを依頼することも可能です。
先ほど算出した、東京駅地点の年間予想発電量を使って、売電収入を計算してみましょう。売電収入の計算式は、売電単価(円) × 発電量(kWh)ですが、年間予想発電量の数字をそのまま発電量に当てはめてはいけません。
卒FIT後の売電は、自家消費をして余った電気を売る余剰売電が一般的です。そのため、自家消費分を考慮しなければなりません。自家消費率を一般水準の30%とすると、自家消費分と売電分はそれぞれ以下のようになります。
自家消費分 = 5,475(kWh) × 30% = 1,642.5(kWh)
売電分 = 5,475(kWh) − 1,642.5(kWh) = 3,832.5(kWh)
売電分の3,832.5kWhを計算式に当てはめて、東京電力エナジーパートナーに売電した場合と、関東エリアでおすすめの新電力に売電した場合の1年間の売電収入を比べてみましょう。
【買取単価と1年間の売電収入】
エリア電力会社・新電力 | 買取単価(/kWh) | 1年間の売電収入(1円未満切り捨て) |
---|---|---|
エネクスライフサービス | 12.5円 | 12.5(円) × 3,832.5(kWh) = 47,906(円) |
ENEOS | 11円 | 11(円) × 3,832.5(kWh) = 42,157(円) |
東急パワーサプライ | 12円 | 12(円) × 3,832.5(kWh) = 45,990(円) |
みんな電力 | 8.5円 | 8.5(円) × 3,832.5(kWh) = 32,576(円) |
東京電力エナジーパートナー | 8.5円 | 8.5(円) × 3,832.5(kWh) = 32,576(円) |
例えば、エネクスライフサービスと東京電力エナジーパートナーでは、1年間の売電収入に15,330円もの差が生じます。卒FIT後は大手電力会社への売電を継続するよりも、売電先を切り替えた方が圧倒的に売電収入が多くなるため、少しでも買取単価の高い事業者へ切り替えるのがおすすめです。
※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .
※参考:ENEOS . 「ENEOS太陽光買取サービス」 . https://www.eneos.co.jp/solar-kaitori/ , (2024-02-15) .
※参考:東急パワーサプライ . 「電力買取サービスについて」 . https://www.tokyu-ps.jp/kaitori/ , (2024-02-15) .
※参考:みんな電力 . 「卒FIT買取プラットフォーム」 . https://minden.co.jp/afterfit/ , (2024-02-15) .
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社 . 「再エネを、最適でつなぐ。個人のお客さま」 . https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/after-fit.html , (2024-02-15) .
卒FIT後に新たな売電先を探す際は、太陽光発電設備を設置しているエリアによって、選択肢が制限される点に注意が必要です。各エリアの売電可能な事業者は資源エネルギー庁のサイトに掲載されていますので、売電先を探す際の参考にしてみてください。
新たな売電先を選ぶ際に重要なのは、やはり買取価格です。太陽光発電設備の設置場所に対応している買取業者一社一社の買取価格を調査するのが手間な方は、以下の記事をチェックしてみてください。エリア別におすすめの買取業者をご紹介しています。
>【地域別】卒FITしたら売電したいおすすめ事業者は? 余剰電力買取プラン比較【2024年3月最新】
卒FIT後の売電先を決める際のポイントは以下のとおりです。
それぞれ解説します。
売電先を決める際は、買取業者が提示する契約条件を必ず確認しましょう。買取対象エリアや加入条件は、買取業者によって異なります。また契約するプランによって契約条件が異なる場合もあります。売電先を検討する際は、各プランの契約条件をしっかり読み込むことが大切です。
買取単価そのものはもちろん、その買取単価が適用される条件や期間、また支払い方法や支払いサイクル、契約期間、解約時の違約金の有無なども忘れずに確認しましょう。
買取価格以外の特典も、売電先を決める際の重要なポイントです。買取業者によってはセットプランなどを用意しており、売電と併せて電気の契約や蓄電池の購入を行うことで、買取単価が数円アップするケースも多いです。
また金銭の代わりに電力会社独自のポイントや他社のポイントが付与されるプランや、電気を売らずに寄付することで、地域の特産品などがもらえるプランもあります。
卒FIT後は売電先だけでなく、電気の使い道も自由に選べるため、興味のある方は売電以外の選択肢もチェックしてみてください。
卒FIT後は売電価格が下がってしまうため、少しでも単価の高い電力会社に売電先を切り替えるのがおすすめです。しっかりと契約条件を確認した上で、最もお得になるプランを契約するようにしましょう。
卒FIT後もより多くの売電収入を得たい方は、株式会社エネクスライフサービスの「太陽光電力の買取サービス」がおすすめです。高水準の買取価格を実現しており、例えば、関東エリアの買取単価は12.5円/kWhです。さらに、TERASELでんきをご利用の場合は、買取単価が1円アップします。卒FIT後の新しい売電先をお探しの方は、ぜひ、エネクスライフサービスの「太陽光電力の買取サービス」をご検討ください。
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