投稿日:2024/08/30
更新日:2024/08/30
でんきの豆知識
2024年も物価高の勢いは止まりません。主に食料品の値上げが相次いでいますが、電気料金も例外ではありません。2024年もさまざまな理由による値上げが予定されており、家計に影響しそうです。この電気料金の値上げはいつまで続くのでしょうか?
本記事では、2024年に電気料金が値上がりするタイミングとその要因、また今後の見通しや、各家庭で実施できる対策について解説していきます。
※本記事の内容は2024年8月時点の情報です
目次
2024年は電気料金が値上がりするタイミングが3回、値下がりするタイミングが1回あります。
それぞれの内容と値上がり額を見ていきましょう。
託送料金は、送配電事業者に支払う「送配電網の使用料」です。毎月の電気料金の中に含まれており、需要家から集めた託送料金は小売電気事業者が送配電事業者に支払っています。
これまで託送料金を支払うのは小売電気事業者のみでしたが、2024年4月から「発電側課金」という制度が導入され、発電事業者も全体の10%程度の託送料金を負担することになりました。これは送配電網の増強コストの負担を平準化することが目的です。
この発電側課金の導入などにより一般送配電事業者の収入の見通しが変更になったため、託送料金が変更になり、各社で電気料金の改定が行われました。託送料金はエリアによって異なるため、値上げになった電力会社もあれば、値下げになった電力会社もあります。
エリア電力会社の託送料金の変更による電気料金への影響金額は、以下の通りです。
2024年3月使用分(4月検針分) | 2024年4月使用分(5月検針分) | 差額 | |
---|---|---|---|
北海道電力 | 13,334.60 | 13,422.00 | 87.40 |
東北電力 | 11,606.40 | 11,579.40 | ▲27.00 |
東京電力EP | 11,368.96 | 11,375.00 | 6.04 |
中部電力ミライズ | 8,391.60 | 8,449.16 | 57.56 |
北陸電力 | 11,159.20 | 11,168.20 | 9.00 |
関西電力 | 7,193.76 | 7,254.43 | 60.67 |
中国電力 | 11,271.62 | 11,295.83 | 24.21 |
四国電力 | 10,719.34 | 10,716.34 | ▲3.00 |
九州電力 | 7,756.96 | 7,783.96 | 27.00 |
沖縄電力 | 13,258.25 | 13,298.25 | 40.00 |
※北海道電力・東北電力・東京電力EP・中部電力ミライズ・北陸電力・九州電力は「従量電灯B、40A」、関西電力・中国電力・四国電力は「従量電灯A」、沖縄電力は「従量電灯」、電気使用量は300kWh/月で計算しています
※燃料費調整額および再生可能エネルギー発電促進賦課金は含まれておりません
容量市場の実際の電気の取引が2024年4月から始まったことに伴い、小売電気事業者の容量拠出金の支払いも始まりました。容量市場とは、将来必要とされる電力供給力(kW)を確保するための市場です。実際に発電された電力(kWh)ではなく、4年後に供給可能な容量をオークション方式で取引します。
オークションで落札された発電事業者は、4年後に実際に電力を供給をすることで容量確保契約金額を受け取ることができます。この容量確保契約金額の原資となるのが容量拠出金で、小売電気事業者・一般送配電事業者・配電事業者に支払い義務があるのです。
各事業者の負担金額は1kWh当たり数円程度の見込みですが、一部の小売電気事業者は容量拠出金を電気料金に転嫁しています。契約している電力会社によっては容量拠出金による値上げが行われているので、電力会社からお知らせなどが出ていないかチェックしてみてください。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、電力会社がFIT制度で再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に要する費用を賄うためのものです。電気を使用する全ての家庭や企業が負担するため、月々の電気料金に、使用量に応じた再エネ賦課金が含まれています。
2024年度の再エネ賦課金の単価は3.49円/1kWhとなり、2023年度の1.40円/1kWhから2.09円/kWhの値上げとなりました。2倍以上の値上げに驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、これは制度開始以来、初の引き下げとなった2023年度が極端に安かったためで、実際のところは2022年度と同水準です。しかし、値上がり幅が大きいので、ご使用量のお知らせや請求書を見て、値上げを強く実感するでしょう。
2023年1月から2024年5月まで「電気・ガス価格激変緩和対策事業」と呼ばれる電気料金・ガス料金の補助金事業が実施されていました。
近年は世界的な原材料価格の高騰や円安などの影響により、食料品や日用品など、あらゆるものが値上がりし、国民生活や企業活動に悪影響を及ぼしています。そこで政府は、物価の高騰により家計や業績が厳しい状況にある家庭・企業の支援を行うとして、2022年10月28日に「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定しました。電気・ガス価格激変緩和対策事業は、その中の取り組みの一つです。
使用量に応じて、毎月の電気料金・ガス料金から直接値引きされます。2024年の電気1kWhあたり、都市ガス1㎥あたりの補助額(値引き単価)は、以下の通りです。
対象期間 | 値引き単価 | ||
---|---|---|---|
電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス | |
2024年1月〜2024年4月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 15円/㎥ |
2024年5月使用分 | 1.8円/kWh | 0.9円/kWh | 7.5円/㎥ |
2024年6月使用分(7月検針分)から値引きがなくなるため、実質値上がりとなります。
参考:電気・ガス価格激変緩和対策事業. https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/ , (2024-8-27).
電気・ガス価格激変緩和対策事業と同様の電気・ガス料金の補助が、「酷暑乗り切り緊急支援」として2024年8月〜10月の3カ月間限定で復活します。
電気1kWhあたり、都市ガス1㎥あたりの補助額(値引き単価)は、以下の通りです。
対象期間 | 値引き単価 | ||
---|---|---|---|
電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス | |
2024年8月・9月使用分 | 4.0円/kWh | 2.0円/kWh | 17.5円/㎥ |
2024年10月使用分 | 2.5円/kWh | 1.3円/kWh | 10円/㎥ |
参考:電気・ガス価格激変緩和対策事業. https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/ , (2024-8-27).
酷暑乗り切り緊急支援による値引きは、2024年10月使用分までです。電気・ガス価格激変緩和対策事業と同様に、酷暑乗り切り緊急支援の値引きがなくなるタイミングで、実質値上がりとなります。
2024年に電気料金が値上がり・値下がりするタイミングをご紹介しましたが、実際の電気料金はどの程度変わるのでしょうか。北海道電力・東北電力・東京電力EP・中部電力ミライズ・北陸電力・九州電力は「従量電灯B、40A」、関西電力・中国電力・四国電力は「従量電灯A」、沖縄電力は「従量電灯」を契約していて、1カ月の電気使用量が300kWhのご家庭を例に、大手電力会社の電気料金を試算してみました。なお、以下の表の電気料金には、電気・ガス価格激変緩和対策事業ならびに酷暑乗り切り緊急支援の補助額、また沖縄電力のみ沖縄電気料金高騰緊急対策事業の補助額が含まれています。
2024年3月使用分(4月検針分) | 2024年4月使用分(5月検針分) | 2024年5月使用分(6月検針分) | 2024年6月使用分(7月検針分) | 2024年7月使用分(8月検針分) | 2024年8月使用分(9月検針分) | |
---|---|---|---|---|---|---|
北海道電力 | 11099.60円 | 11763.00円(663.40円) | 12228.00円(465.00円) | 12762.00円(534.00円) | 12762.00円(0.00円) | 11589.00円(▲1173.00円) |
東北電力 | 8996.40円 | 9596.40円(599.60円) | 10058.40円(462.00円) | 10541.40円(483.00円) | 10487.40円(▲54.00円) | 9284.40円(▲1203.00円) |
東京電力EP | 9025.96円 | 9680.00円(654.04円) | 10142.00円(462.00円) | 10595.00円(453.00円) | 10529.00円(▲66.00円) | 9311.00円(▲1218.00円) |
中部電力ミライズ | 8781.60円 | 9508.16円(726.56円) | 9949.16円(441.00円) | 10348.16円(399.00円) | 10258.16円(▲90.00円) | 9031.16円(▲1227.00円) |
北陸電力 | 8678.20円 | 9284.20円(606.00円) | 9764.20円(480.00円) | 10289.20円(525.00円) | 10265.20円(▲24.00円) | 9074.20円(▲1191.00円) |
関西電力 | 7235.82円 | 7923.49円(687.67円) | 8433.49円(510.00円) | 8973.49円(540.00円) | 8973.49円(0.00円) | 7773.49円(▲1200.00円) |
中国電力 | 8301.48円 | 8919.69円(618.21円) | 9384.68円(464.992円) | 9906.64円(521.96円) | 9867.73円(▲38.91円) | 8685.52円(▲1182.21円) |
四国電力 | 9507.38円 | 10095.35円(587.97円) | 10062.37円(▲32.98円) | 10053.36円(▲9.01円) | 10035.34円(▲18.02円) | 10053.36円(18.02円) |
九州電力 | 7684.96円 | 8338.96円(654.00円) | 8848.96円(510.00円) | 9388.96円(540.00円) | 9388.96円(0.00円) | 8188.96円(▲1200.00円) |
沖縄電力 | 9214.29円 | 9830.27円(615.98円) | 10505.31円(675.04円) | 11216.34円(711.03円) | 11171.40円(▲44.94円) | 9995.34円(▲1176.06円) |
気になる電気料金の今後の見通しですが、電気料金が高騰した2022年と比べて2023年以降の石炭・原油・液化天然ガス(LNG)の取引価格は落ち着いているため、電気料金が右肩上がりで高騰し続けるということは考えにくいです。一方で、2021年以前の水準にまで値下がりするかといえば、それもまた起こり得ないでしょう。詳しくは次項で解説しますが、燃料価格や為替相場に大きな変動がない限り、しばらくは現在の水準で少しの値上げや値下げを繰り返しながら推移していくと考えられます。
2022年と比べて落ち着いているとはいえ、電気料金は引き続き高止まりしています。それはなぜなのでしょうか。「燃料価格の値上がり」と「国内の電力供給力の低下」の大きく2つの要因があります。
まず電気料金の値上がりの要因として挙げられるのが、燃料価格の値上がりです。コロナ禍からの経済回復により化石燃料の需要が増加していたところに、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、燃料価格の高騰に拍車がかかりました。ピークは過ぎましたが、2021年以前の価格水準に戻る気配はありません。
燃料価格の値上がりが電気料金に大きく影響する理由は、日本が火力発電大国だからです。2022年度の日本の一次エネルギー供給構成を見ると、実に、全体の83.5%を石炭・石油・液化天然ガス(LNG)が占めており、どれだけエネルギーを化石燃料に依存しているかがわかるでしょう。
また燃料価格が値上がりしているのは、ロシアによるウクライナ侵攻だけが理由ではありません。脱炭素社会の実現へ向けて、他の化石燃料よりも二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)を排出しない、液化天然ガス(LNG)の需要が世界的に増えていることや、歴史的な円安も一因となっています。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 1.安定供給」. https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/01.html , (2024-8-27).
国内の電力供給力の低下も電気料金の値上がりが続く理由の1つです。
政府は、2050年のカーボンニュートラル実現へ向けて、2030年度時点で火力発電の比率を現在の76%程度から41%程度まで減少させる方針を掲げています。一方で、その代わりとなる電力供給力を十分に確保できていないのが現状です。
火力発電の代わりとして挙げられるのが、主に原子力発電と再生可能エネルギーですが、原子力発電は2011年の東日本大震災をきっかけに停止を続けている発電所が多く、2010年度は日本の一次エネルギー供給構成の11.2%を占めていましたが、2022年度は2.6%にまで減少しています。
また再生可能エネルギー(水力を除く)は、2022年度は10.3%まで増加していますが、火力発電とは異なり、発電量が天候や時間帯に左右されるため、現状ではどうしても供給量が安定しません。
以前は不足した供給量を火力発電によって補っていましたが、2016年の電力小売全面自由化によって小売電気事業者同士の競争が激しくなり、その結果、大手電力会社が採算の取れない老朽化した火力発電所の休止・廃止を進めたため、火力発電所の数も減ってしまっています。
このような理由から国内の電力供給力が低下しており、電力需給が逼迫すると電気の市場価格が高騰し、電気料金も値上がりしてしまうのです。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 1.安定供給」. https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/01.html , (2024-8-27).
ここからはそれぞれのご家庭でできる、電気料金の値上げへの対策をご紹介します。
2016年の電力小売全面自由化により、一般のご家庭も自由に電力会社を選べるようになりました。
新電力は各社が独自の料金プランを提供しており、基本料金(最低料金)や電力量料金の単価が安いプランだけではなく、都市ガスやスマートフォン、インターネット回線といった電気以外のサービスとのセット割りや、毎月の電気料金に応じたポイント付与などのサービスもあり、乗り換えるだけで電気料金が安くなる可能性が高いです。
現在ご契約中のプランと比較し、基本料金(最低料金)や電力量料金の単価が安くなるプランやライフスタイルに合ったプランを選びましょう。
従来の料金プランから従来の料金プランへの乗り換えの他、市場連動型プランへの乗り換えもおすすめです。
市場連動型プランは、電力量料金の電源料金が電気の市場価格に応じて30分ごとに変動するプランです。「いつ」「どのくらい」電気を使ったかで電気料金が変動するため、市場価格に応じて電気の使用をコントロールできる方や、市場価格が安くなりやすい昼間や深夜に電気をたくさん使う方は、市場連動型プランに乗り換えることで大幅に電気料金を安くできる可能性があります。また2024年は電気の市場価格が比較的低い水準で落ち着いているため、市場連動型プランへの乗り換えるには良いタイミングです。
TERASELでんきには、「TERASELマーケットプラン」と「TERASELマーケットあんしんプラン」の2つの市場連動型プランがあるので、ぜひ、詳細をチェックしてみてください。
電化製品は年々進化しており、新しい機種は省エネ性能が高く、節電だけではなく、節ガスや節水にもなります。大幅な節約につながる可能性もあるので、古い家電を使い続けているなら、思い切って最新の機種に買い替えてしまうのがおすすめです。
節電を目的に電化製品を買い替える場合は、必ず「統一省エネラベル」をチェックし、比較検討するようにしましょう。統一省エネラベルは、製品の省エネ性能や経済性などの情報を提供するラベルで、以下の3つが表示されています。
多段階評価点:市場における製品の省エネ性能を5.0〜1.0までの41段階で示す
省エネルギーラベル:省エネ法で定められた目標基準(トップランナー基準)を達成しているかどうかを示す
年間目安エネルギー料金:製品を1年間使用した場合の経済性を示す
なお、統一省エネラベルから多段階評価点を除いた情報を提供する「簡易版統一省エネラベル」もあります。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「統一省エネラベルが変わりました」. https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/retail/touitsu_shoenelabel/ , (2024-8-27).
電気料金の削減といえば、節電を思い浮かべる方も多いでしょう。どの電化製品にも共通する節電のポイントは、以下の3つです。
エアコンや照明などは付けっぱなしにせず、使わない時は消すようにしましょう。ついつい消すのを忘れてしまうという方は、オフタイマーや無操作自動オフといった各家電の電源オプション機能を設定するのがおすすめです。
また無理のない節電には、使用していなくてもコンセントを差しているだけで電力が消費される「待機電力」の削減が重要です。小型家電は使うとき以外はコンセントを抜く、テレビやパソコンなどは主電源から切るを習慣にしましょう。また機能維持のための電力が必要で、コンセントを抜いたり、主電源から切ったりすることが難しいレコーダーなどの機器は、省エネモードを活用して待機電力を削減しましょう。
意外と忘れがちなのが、電化製品の掃除です。本体の内外にたまったホコリや汚れは、機器の性能を落としてしまい、本来の性能を発揮しようとより多くの電力を消費するため、日々の掃除が大切です。表面のホコリや汚れだけではなく、各家電の取扱説明書に従って、定期的に内部の掃除もするようにしましょう。
小さな心がけから無理なく節電に取り組みましょう。
電気料金が値上がりしている近年は、太陽光発電でつくった電気を自家消費するメリットが大きいです。太陽光発電設備を導入すれば、太陽が出ている時間帯は電力会社から電気を購入せずに済み、また蓄電池もセットで導入すれば、1日に使う電気のほとんどを賄うことができます。もちろん、余った電気を売って、売電収入を得ることも可能です。
自然災害などによる停電にも備えることができるため、戸建てにお住まいの方は、ぜひ、太陽光発電設備と蓄電池の設置を検討してみてください。
電気料金は引き続き高止まりの状態が続くと考えられます。また国際情勢が緊迫化しており、いつまた2022年のような電気料金の高騰が起こるかわかりません。
電気料金を少しでも安くしたいのなら、まずはライフスタイルに合ったプランを持つ電力会社に乗り換えるべきです。現在の小売事業者との契約が長い方は、一度、乗り換えを検討してみてはいかがでしょうか?
電気の使用量が多くて電気料金が高いとお悩みの方におすすめなのが、TERASELでんきの「超TERASELプラン」です。電気をたくさん使う世帯ほど電気料金がお得になるプランで、世帯人数の多いご家庭や屋内でペットを飼われているご家庭、テレワークなどで在宅時間が長い方などに特におすすめです。また市場価格に応じて電気の使い方を工夫できる方や、昼間や深夜に電気をたくさん使う方は、市場連動型プランの「TERASELマーケットプラン」や「TERASELマーケットあんしんプラン」もご検討ください。
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