もう少し節約できるんだろうな…と思いながらも、どこから手を付けていいのかわからないのが電気代。
使っている家電にどれくらい電気代がかかっているのか調べたくても、書いてある数字の見方を知らない。
電力会社を乗り換えれば安いと聞くけど、調べるのも面倒だしなんだか不安。
明細を見て「高い!」と思っても、数ヶ月前の料金だと思うと節約する気が失せる。
そういう方、とても多いのではないでしょうか。
今回はそんな方々のために、TERASEL(テラセル)でんきの“中の人”が、電気について基礎から解説します。
お話を聞くのは、典型的な一般消費者のアヤメさん。「快適に暮らしながら節約できる?」という、わがままな疑問をぶつけます。
なかなか行動できないタイプの人も、この機会にぜひ読んでみてください。
「そうだったんだ!」という新しい知識が増えるはずです。
なお、本記事の情報は2024年9月時点での情報です。
この記事を書いた人
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野中 康平マーケティング室 室長
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大学在学中、発展途上国でのボランティア活動がきっかけで
伊藤忠エネクスに入社。
入社後は一貫して電力ビジネスに携わり、電力ビジネス領域における大規模システム構築を実現。
電力のスペシャリストとして電力ビジネスの拡大に尽力している。
メンバーリスト
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教えてもらう人
アヤメ
神奈川県在住の40代。
一級建築士の資格を持つフリーライター。
夫と小学生の子ども1人の3人暮らし
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でんきのプロ
アメミヤ
TERASEL(テラセル)でんきの中の人。
賃貸マンションに一人暮らし。
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司会進行
ノナカ
伊藤忠エネクスに入社後、
一貫して電力ビジネスに携わっている電力のスペシャリスト。
インタビュー冒頭
今日はよろしくお願いします。
アヤメさん、この機会に何でも聞いてくださいね!
今回この取材を受けるにあたって初めてちゃんと明細見てみたら、
夏に6000円だった電気代が2万円超えてて…!
燃料費調整額とか聞いたこともない料金が含まれてるの
にも気づいて、正直、焦ってます
それはびっくりしますね。
まずは電気代の仕組みからご説明しましょうか!
電気代の内訳は?
電気代は、毎月固定で払う基本料金と、使用量に応じて払う
従量制の電気量料金で構成されています。電気量料金には、発電に使う石炭や原油などの
輸入価格によって変わる燃料費調整額も含まれます。それらに、太陽光発電や風力発電などの
再生可能エネルギー普及推進のための再エネ賦課金
(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が加わって、
毎月の電気代が決まります
2021年、市場連動型のプランで電気代が10万円くらいに
なってしまったというニュースがありましたよね。
燃料費調整額は、それとは違いますね?
市場連動型プランは、
また別の特別な料金体系です。
燃料費調整額は一般的なプランにも含まれるもので、
万単位で電気代が変わることはないですよ。
マイナスになって電気代が安くなることもあるのですが、
最近は輸入原料の価格が高騰してプラスになっています。
その結果、電気代が高くなったと感じている
ご家庭が多いんじゃないでしょうか
燃料費調整額や再エネ賦課金の額って、
だいたいいくらくらいなんですか?
流動的なので年度や月によって大きく変わります。
電気代が1万円のご家庭の場合、
2022年ごろの燃料費調整額は300円くらいでした。
先ほどお伝えした通り
直近でもプラスの状況が続いているのですが、
2024年度はあまりにも続く高騰を受け、
国が支援を行っています。
そのため2024年9月時点では、
電気代が1万円のご家庭の場合、
値引きが適用されて1200円くらい安くなります。
再エネ賦課金も高い水準が続いています。最近だと1000円くらいでしょうか
え、そんなに変動するんですね!
自分でコントロールしきれない部分とはいえ、
気づかずに毎月払ってたと思うと
ちょっとショックですね
電気代の疑問、徹底追及!
電気代について少し調べると、
1段料金・2段料金という言葉がありました。
これは電気代の高低に関係してきますか?
電気代には使用量に応じて
変わる従量料金がありますが、
その価格は一律ではないんです。120kWhまでは1段料金、
300kWhまでは2段料金、
それ以上は3段料金と分かれていて、
だんだん高くなっていくのが基本です
はっきりした理由は公表されていませんが、
おそらく、必要最低限の電気は安く使えるように
ということじゃないでしょうか。私は1人暮らしですが、1段料金で収まることもありますよ
つまり、使用量の目安としては
1人100kWhくらい…ということですね
そうですね。
1人100kWhというのは
ひとつの目安になると思います。
複数人が一緒にいる時間が長いか、
各自が個室にいる時間が長いかでも変わるので、
単純計算はできませんが
3人家族なので120kWhは
難しそうですが、
300kWhを超えないようにちょっと
意識するのは意味がありそうですね
ちなみにTERASEL(テラセル)でんきには、
電気使用量が多くなるほど割安になるプランがあります。
使用量を抑えるのが難しいご家庭は、
ライフスタイルに合うプランがある会社を選ぶのもいいと思います
アンペア(A)という単位についても。
説明をお願いします。
一般家庭向けのプランでは、
基本料金がアンペアで決まることが多いです。
アンペアが大きくなるほどに、
一度に使える電気の量が増えるんです。
一般家庭の場合は、多くが40A。戸建ての場合は、
50Aのこともありますね。
オーバーすると、ブレーカーが落ちてしまいます
基本料金が変わります。
10Aの違いで、280円くらいです
年間で考えると、けっこう違いますね。
でも、電気を契約するときにアンペアを選んだ記憶がありません…
賃貸マンションの場合は、
前の契約者の方の設定が
そのまま引き継がれるんです。
変更したい場合は電力会社に工事を
依頼することになります。
コロコロ変更するものではないので、
1年のうちいちばん電気を使う時期に合わせた
アンペアを選ばないといけません
特別な配線工事がないかぎりは無料です。
通信機能付きのスマートメーターに変わっている場合は工事も不要ですよ。
アンペアを上げると、使える家電の幅が広がるので、
ブレーカーがよく落ちるときはアンペアを上げるといいですね
転勤族なんですけど、
電気代の地域差ってありますか?
けっこうありますよ。発電に使う燃料が
違えば輸入にかかるコストも変わるし、
送配電設備にかかる費用も違います。
同じ電線でも、平地と険しい山中では違ってきますからね。
必須のライフラインなのに
地域差があるのは納得できない部分もあるとは思うのですが…
子どもの医療費や保育料の助成なんかでも、
住む場所でこんなに負担が違うなんて…と思うことはあります。
仕方ないのかもしれませんが、生活に必要なものや公的な援助は、
できるだけ不公平感なく利用したいですね
電気代の計算方法を教えてもらおう!
電気代を節約したいと思うんですが、
家電の表示を見てもどう計算すればいいのかわからないんです。あと、引き落とし額を見るのが2~3ヶ月後なので、
エアコン使いすぎたと気づいたときにはもう夏は終わっている、
みたいな状況なんですよね…
電気代の計算式
まずはひとつめの疑問からいきましょうか。
照明器具や電子レンジはWで表示があり、冷蔵庫やエアコンはkW。
単位からして違うので、難しく感じる人が多いんですよね
メートルとキロメートルの違いと同じように、
W(ワット)を1000倍したのがkW(キロワット)。
ここまでは大丈夫ですね?
W・kWで表されるのは、“消費電力”です。
その瞬間にどれだけ電気を使うかということで、
例えば電子レンジの200Wと600Wでは消費電力が3倍違うということです。
そしてkWhは、実際にどれだけ電気を使うかという“消費電力量”。
消費電力(kW)×使用時間(h)で計算します
W・kWは時速、kWhは実際に進んだ距離という感じですかね?
時速100kmでも5分しか走らないと進む距離はごくわずか、
時速10kmでも100時間走れば1000kmになる…
そういうことです。
電子レンジ、トースター、照明器具などは
どれくらいのパワー(強さ・明るさ)を出せるかが重要なので
600W、80Wといった消費電力で書いてあります。
一方、冷蔵庫やエアコンは1時間あたりどれくらいの電気を使うかが重要なので、
5kWhといった消費電力量で書いてあるんですよ
なるほど、そう言われると納得はできますが、忘れそう…。
身長と体重を入力したらパッと肥満度が表示されるBMIツールの電力版、作ってください!笑
式は決まっているので、
これに当てはめてください。
1kWh当たりの単価は、32.476円にしてあります
(「超TERASEL東京B」プラン、1ヶ月300kWhお使いの場合の単価)
スマートメーターの活用方法
スマートメーターは電気の使用量を30分ごとに計測して、
“見える化”してくれますからね。とはいえメーターをいちいち覗くのは大変ですが、
電力会社によってはwebのマイページで使用状況をチェックできますよ。
今月どれくらい使ってるかがわかりやすいのはいいですね。替えたいと言って替えられるものですか?
替えられるとしても、賃貸なので、
勝手に設備をいじっていいものか不安もあるのですが…
新電力に変えた家から優先的にということになっています。
でも日本全体で2024年度中にすべてスマートメーターに変わる予定ですよ。
国家事業ですので、賃貸でも問題ありません
家電別、節約のコツを教えてもらおう
電気の基本のお話だけで時間が終わってしまいそうですね。
ちょっと急ぎます!家電ごとの節約ポイントについての話に移りましょう
快適に暮らしつつ、
抑えられるポイントが知りたいです!
家電使用時の節約ポイント
さきほど冬の電気代が2万円だったと言いましたが、
オイルヒーターと浴室乾燥機が大きいんですかね…?
オイルは水よりは冷めづらいとはいえ、
温かさをキープするために
ずっとお湯を沸かし続けているような状態です。
エアコンとはそもそも仕組みが違うので、
どうしても電気代はかかります。
加湿器も同じ理由で、電気代がかかりますね
電力を消費する要素のひとつが、熱なんです。
LED電球の消費電力が少ないのは、
明るいだけで熱くないからなんですよ。
私も浴室乾燥は使うのですが、温風と冷風を試したら、
冷風でも乾いたし、温風より1000円くらい安かったです
エコモードや冷風なんかで乾かないだろ!と思ってました。
それ、まずはやってみます
近年は、“エアコンはつけっぱなしのほうがいい問題”
もよく話題になりますね
室内温度(設定したい温度)
と外気温の差が大きいときは有効だと思います。
エアコンは冷やしたり暖めたりするときに電力を使うので、
外気温との差が大きいときに消すと、
もう1回付けたときにまたたくさん電力を使います。
外気温との差が小さければ起動時の消費電力も少ないので、
こまめに消すほうが安いことも多いんじゃないでしょうか
状況によりけりなんですね。
だからいろんな見解があるのか!
エアコンに関してはやっぱり、
設定温度を夏は高め、
冬は低めにするという基本が有効かなと思います
待機電力についてはどうですか?
主電源を切ったり、プラグを抜いたりするほうが節約になると聞きますが
電気代の節約という意味では微々たるものですね。
でも、プラグの差しっぱなしは漏電のリスクがあります。
抜けかけたプラグにホコリがたまって発火するような火災もあるので、
使わないときはプラグを抜くという習慣自体はつけておいてください
家電購入時の節約ポイント
使用時の節約ではなく、
家電購入時に気を付けたほうがいいことってありますか?
大型の液晶テレビは、
消費電力が大きいですよ。
例えば32型と50型だと、年間で数千円違うんじゃないでしょうか
数千円!テレビをちょっと小さくするだけで、そんなに。
最近、リモートワーク用に大きなモニターも買ったんですよ。
それもきっと高いんでしょうね…ずっと光ってますもんね
大きなモニターは快適に仕事ができますし、
大きなテレビは映画館のような楽しさもありますからね。
何を求めるか、どこまでこだわるかというところでしょうね。
ちなみに、液晶よりもプラズマのほうが消費電力は大きいですよ
でも、最新機種ほど高いじゃないですか。
購入費の高さは、電気代の節約でペイできるほどですか?
買ってから15年、20年と経っている古い家電は、
高い電気代を払い続けるより買い替えるほうがいいこともあります。
ただ、数年で劇的に省エネ化することはほとんどありません。
省エネ商品を求めるという目的なら、数年前の型落ちで十分だと思いますよ
参考:主要な電化製品の買い替えによる節約効果
テレビ以外にも、最新のものに変えると
年間の電気代が大きく変わる電化製品はありますか?
もちろんありますよ。
省エネ型機器として、国が買い替えを推奨している電化製品は
なんと30種類以上にのぼります。
エアコンや冷蔵庫などが代表的です
エアコンの電気代は
10年前の型から最新のものに買い替えると
約15%の省エネ効果があるとされています。
家電製品協会の調査ではエアコンの消費電力目安は
2013年で年間903kWh、2023年で年間769kWhなので……。
電気代はいくらになるか分かりますか?
先ほどの計算式に当てはめて考えてみてください
先ほどの計算式では、1kWh当たりの単価は32.476円※でした
「超TERASEL東京B」プランで1カ月300kWhお使いの場合の、1kWh当たりの単価
2013年の年間消費電力903kWhということは、
903kWh×32.476=29,325円!
正解です!
同じ計算式に当てはめると、2023年は
769kWh×32.476=24,974円
になります。
つまり電気代の差額は、年間4,350円になる計算です
同じく家電製品協会の調査を参考にします。
冷蔵庫は買い替えによる節約効果が特に大きく
10年前の型から最新のものに買い替えると
約28~35%の省エネ効果があるとされています。
冷蔵庫の消費電力目安は
2013年で年間370~410kWh、2023年で年間267kWhです。
計算は以下のとおり。
2013年:370kWh×32.476=12,016円 ~ 410kWh×32.476=13,315円
2023年:267kWh×32.476=8,671円
年間の差額は 3,345~4,644円です
消費電力が少ない方が、節約効果が高いことがよく分かりました
参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「家庭向け省エネ関連情報 機器の買換で省エネ節約」.
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/choice/ ,(2024-09-02).
新電力について、教えてもらおう
アヤメさんは神奈川県にお住まいで、
東京電力をお使いなんですよね?
はい。疑り深い性格ですし、
“インフラは大手でしょ”という感覚がどうしてもあります。スマホの2台持ちみたいなことができるならいいけど、
1社選べと言われたら、災害時のことを考えても大手に…と考えてしまいます
電気の自由化は、実は小売の自由化なんです。発電や送配電は同じ設備を使うので、
電気を提供するというインフラの部分は実は変わらないんですよ
え、そんなこと、新電力のサイトに書いてあったかな…
書いてありますが、トップページに大々的に書いてあるわけではないですね。
よくある質問のところとかです
それは、知らない人が多いと思いますよ!
でも、それを知っても、新電力が安い理由がわからなくて、
疑いが捨てきれないところはあります
大手電力会社って、デパートや遊園地、
工場なんかの大規模な法人とも契約していますよね。
電気を大量に使う法人には少し割安に電気を提供するので、
個人顧客まで安くできないのではないでしょうか。
新電力は個人だけを相手にしているので、
大手より少し安めに設定することができます。
それだけではないですが、そういう一面はあると思っています
納得できると安心できて、
乗り換えてもいいかなと思えてきました。
家電の消費電力を計算するより手っ取り早そうですし!
ライフスタイルに合わせて、ストレスなく節電しよう
今日はすごく勉強になりました。
ありがとうございます!
雨宮さんは、電気の節約にはマメなほうなんですか?
エアコンの設定温度に気を付けているのと、
母からの教えで、“冷蔵庫はスカスカ、
冷凍庫がパンパン”をちょっと意識しているくらいです
冷蔵庫はスカスカのほうが冷却効果が高くて、
冷凍庫はパンパンのほうが保冷効果が高まるというのは、基本の節約テクニックですね
浴室乾燥も使って、
それでも1段料金で収まることがあるんですね
超えるときもありますけどね。
基本的に、あまり気にせず暮らすのがいいと思うんですよ
テレビは次はもう少し小さく、
浴室乾燥はエコモード、真夏のエアコンは連続稼働、
でもうちはオイルヒーターと加湿器は手放せない…!
そうです、そうです。
快適なライフスタイルは人それぞれで、譲れるところと譲れないところがありますよね。
譲れるところでは知識を活用して節電し、
譲れないところは無駄使いにならない程度に
自由に使うのがいちばんだと思いますよ