投稿日:2022/01/12
更新日:2024/09/30
でんきの節目
電力自由化と聞くようになって、数年がたっています。新電力を供給する事業者の数は多く、どの電力を選べば良いのか分からないまま、という方もいるかもしれません。
この記事では、電力小売自由化の背景から仕組み、従来電力と新電力の違いなどをご紹介していきます。後半では新電力に切り替えたい場合の始め方もお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、本記事の情報は2024年9月時点での情報になります。
最新の情報は各公式ページをご参考ください。
目次
電力小売自由化以前では、一般のご家庭や店舗が使えたのは一般電気事業者の提供する電気のみでした。電力の供給が公的事業として守られた結果でしたが、従来の体制では市場競争も生まれず、業界の発展に課題が残る制度だったといえます。
そこで法規制が改革され、2016年(平成28年)4月1日以降、日本では小売業が電気の販売に参入することが許されました。電力小売自由化が始まり、これまでの電力会社以外の企業も自由に市場へ新規参入できるようになったのです。
現在では小売事業者の数が増えており、資源エネルギー庁によると2024年8月時点で電気の小売事業者は733事業者にのぼっています。(※)
参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「登録小売電気事業者一覧」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/ ,(2024-08-28).
電力自由化の目的は、大きく分けて
の3点です。
電力を供給する企業にとって、利用者に選ばれるためには、安定した電力の供給と電気料金の低価格化は無視できません。サービスを打ち出したり、付加価値を作ってPRしたりしており、現在では業界に市場競争が生まれつつある状況に変化しています。
また電力小売自由化によって、利用者が地域の枠を越えて購入する電力会社を選択できるようになりました。企業にとっては、サービスを注目される機会が増え、自社の特徴を生かしたシステムや独自のプランを作ることで、従来のルールではできなかった新規参入が可能なチャンスとなっています。
新電力はこれまでの一般電気事業社以外の事業者が供給する、小売電力の総称です。
先に許可された、法人向けの電力小売をしていた企業が率先して新規参入し、最近では通信会社やコンビニ、鉄道会社など、一見電力には関係のないように見える企業まで、さまざまな企業が新電力を供給しています。
また電力は公共事業に近い業種のため地域性も高く、地元の方々の生活に密着した会社なども、新電力事業者として参入しました。
一方これまでの一般電気事業者も、過去の制度では制限されていた地域の垣根を越えてサービスを展開できるようになっています。
電気事業のうち発電については、もっとも早く自由化されました。1995年に電気事業法が改正され、それぞれの地域の電力会社だけでなく、新規参入事業者が独立系発電事業者(IPP)として発電して電気を提供することが可能になっています。しかし、電気を販売できるのが電力会社のみだったことから、電力の卸先が制限されている状態でした。
国内で最初の電力小売自由化は、2000年3月です。当時の規制緩和は一般の消費者ではなく、大規模工場やデパート、オフィスビルなど一部の法人のみが対象。彼らのみが、新規参入した電力会社から電力会社を自由に選ぶことができ、新電力を購入することが可能でした。
その後、2004年4月と2005年4月に、段階的に電力小売自由化の対象が広がっていきます。この時期に高圧区分の中小規模工場や中小ビルなど、電力会社の選択をできる範囲が拡大しました。
2016年4月1日には、家庭や店舗などでも、自由に電力会社が選べるよう規制が変更され、現在の電力小売自由化が実現しています。このような経過をたどって、低圧電力を使用している消費者が、自由に電力の購入先を選べるようになったのです。
仕上げとして2020年4月には、発送電分離の考えに基づいて、今まで自由化していなかった送配電の分社化が実施されました。分社化が義務となったため、従来電力を供給していた一般電気事業者は発電と送電の組織を分けなければなりません。この変更によって、送電があくまでも中立的な立場で行われるようになったといえるでしょう。
2016年(平成28年)4月1日の法改正以降、小売事業者の登録数は年々増えていましたが、2022年4月の743件をピークに減少傾向となり、2024年8月末時点での登録件数は733社となっています(※)。
またロシアによるウクライナ侵攻をはじめとした世界情勢の変化による影響を受け、2022年には電気料金が大幅に高騰しました。これに対し、国が2023年1月以降の激変緩和対策事業で値引き支援を実施したことで、2023年9月以降は大きな変動もなく安定した推移を見せています(※)。
参考:経済産業省.「電力小売全面自由化の進捗状況について」P7,12.
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/071_03_00.pdf ,(2024-08-22).
参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「登録小売電気事業者一覧」.
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/ ,(2024-08-28).
電力自由化によって電力会社を選択できるようになったことで、消費者には主に以下の2つのメリットが生まれました。
自分に合った電力会社を選ぶために、ここで、それぞれのメリットについて詳しく知っておきましょう。
従来電力から新電力に乗り換えると、今までよりも電気料金が安くなる可能性があります。
電力自由化以前は住んでいる地域ごとに契約できる電力会社が決まっていましたが、電力自由化によって、消費者は地域を問わず契約する電力会社を選べるようになりました。また法律に基づいて設定されていた電気料金は、現在では電力会社の一存で設定が可能となっています。これにより、小売事業者間での価格競争が起こっています。新電力会社は大手電力会社よりも安い電気料金プランを展開しているケースが多いため、消費者は自分に合った電力会社と契約することで、今までよりも電気料金を抑えられる可能性があります。
さらには、新電力会社は電気以外のサービスも提供しているケースも多く、他のサービスとセットで契約することで、電気料金の割引を受けられる可能性もあります。例えばガス事業を既存で行っている事業者の新電力なら、ガスと併せて契約すると、割引を受けてお得に利用できるかもしれません。携帯電話の契約などを行っている通信業界の事業者であれば、通信料金とセットでの割引を用意しているところもあるでしょう。
その他、クレジットカードでの支払いが選択できる事業者、通信料などのサービス料金と合算して支払える事業者、独自の利用ポイントを用意している事業者なども存在します。このような事業者と契約した場合、電気料金そのもののの割引を受けられるわけではありませんが、家計全体で見ればお得になるでしょう。
電力自由化により、利用者はさまざまな発電方法が選べるようになりました。例えば風力発電や地熱発電といった再生可能エネルギーによる、自然の力を利用して発電する方法を採用している電力会社を選べば、環境負荷に配慮した電力を選択していることになります。省エネにつながるグッズやサービスを紹介してくれる事業者ならば、家計と環境の両面で選択になるといえるでしょう。
また電力自由化により、利用者は地域外の事業者を選んで電気を購入できるようになりました。サービスの利用範囲でさえあれば、応援している自治体などにある企業を選ぶことも可能です。あえて地元の企業を選択することもできます。地域貢献の観点で、利用する事業者を選べるのです。
電力自由化にはさまざまなメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。
デメリットも理解した上で、契約する電力会社を選ぶことが大切です。
電力自由化以降は電力会社ごとに提供するプランや電気料金が異なるため、自分に合っていない新電力に乗り換えてしまうと、かえって電気料金が高くなる可能性もゼロではありません。電力会社の乗り換えをする際は、見積もりなどを確認し、乗り換え後の電気料金をしっかりとシミュレーションしておきましょう。
新電力の中には、市場連動型のプランを扱う電力会社も増えています。市場連動型の場合、契約時には電気料金が安くても、燃料費が高騰した際には今よりも高くなる可能性があります。
電力会社によっては最低契約期間が定めてられており、その期間が過ぎる前に解約をすると、違約金が発生するケースがあります。これも電力自由化以降の変化で、以前は契約期間という概念はなく、居住地域が変わった際などもタイミングを考慮する必要はありませんでした。特に電話で勧誘を受けて電力会社を変更する場合は、注意が必要です。その場で契約を決定せず、プランの内容や電気料金をしっかりと確認しましょう。
電力供給の仕組みについて、従来電力も新電力も基本の構造は同じです。
という3部門に分かれています。
従来電力は全国で10社ある一般電気事業者と呼ばれる電力会社が、地域ごとに担当をして供給する電力です。発電、送電、小売の3部門を1社で完結して家庭や店舗まで電力を届けています。
新電力は
という3つのパターンに分類可能です。複数のパターンを組み合わせている事業者もあるため、事業者ごとに特徴が異なり、種類が細分化されています。
メリットの部分でご紹介した内容と重複しますが、新電力にすると各電力会社が独自に設定した電気料金を支払うことになります。契約する電力会社によって金額の幅が生まれるため、事業者間で価格競争が生じます。そのため消費者は、電力会社の選び方次第で、毎月の電気料金を安くできる可能性があります。
またガスや携帯電話など他のサービスとのセット割や独自の利用ポイントが貯まる電力会社があるのも、従来電力とは異なる点です。発電方法の選択肢も増え、さらには、自然の力を利用して発電する事業者を選べば、環境に配慮した電力を利用していることになります。
続いて、新電力に切り替えても変わらないことをご紹介します。切り替えることによるデメリットに不安を感じている方はぜひチェックしてみてください。
従来電力でも新電力でも、送電の際は既存の送配電網を使います。現在の送電部門は、発送電分離の考えに基づいて中立の立場にあるため、どのような事業者が販売する電気を利用しても扱いに変わりはありません。電線も従来のものを使用するため、送電時の安全性にも変化はなく、新たに電柱を立てたり電線を引いたりする必要もないです。
電気そのものの品質は、どの事業者から電気を買っても差はありません。すべての事業者の電気は、送電網の中を入り混じって流れるため、同じ送電網から供給された場合受け取る電気も同じになります。新電力だからといって、電力が弱くなったり途切れたりする心配もないのです。
従来の一般電気事業者から分社化はされたものの、電力小売自由化となった現在でも送電部門は、国の許可を受けた企業のみが行うことになっています。それは、電力供給を行う部門のうち、送電部門が停電を防ぐために重要な役割を担っているからです。
これにより、限られた事業者が中立の立場で送配電を行う仕組みとなるため、どの小売事業者と契約していても同じ送配電ネットワークから電力が供給されます。もしもの時でも、新電力だからといって停電が増えるわけではないのです。
また、万が一選んだ新電力の小売事業者が倒産してしまっても、電気の供給が突然止まることはありません。消費者を保護するため、各電力会社は供給停止前に必ず消費者に通知するルールがあるためです。
もしも他社への切り替えができない場合は、従来の一般電気事業者が電気を供給します。これらの制度によって、新電力事業者が機能しなくなってしまっても、利用者は障害なく電気を使い続けることができる仕組みになっているといえるでしょう。
新電力を使い始める際は
の3段階で計画します。
申し込み自体は非常に簡単な事業者がほとんどですが、選択肢が多すぎて迷ってしまったり、ギリギリになって実は契約できないというトラブルになったりするかもしれません。あらかじめ使い始めたい日数から逆算し、余裕を持って手配するのがおすすめです。
新電力の供給範囲は、従来の一般電気事業者が管轄していた範囲に基づいて決められていることが大多数。まずは電力を使用する場所が供給対象の範囲となっている電力会社を、ピックアップしましょう。
また電気を使用したい建物や部屋が、自由に電力会社を選べるかどうかを確認しておいてください。マンションでも戸建てでも、戸別に入居者と電力会社が契約をしている場合、基本的に電気の利用者は自由に電力会社を選べます。ただし、建物全体が電力会社と一括で契約をしているようなマンション・アパートもあるかもしれません。その場合は、自由に電力会社を選ぶことはできず、全体で契約している電力会社を利用する必要があります。
利用できる電力会社がわかったら、各事業者のプランを比較して、自分に合ったプランを打ち出している事業者を検討していきましょう。
利用したい電力会社が決まったら、利用開始の申し込みです。使い始める予定の電力会社へ連絡をします。
申し込み時には、これまでに使用していた
などの情報が必要です。
また、一部の電力会社では契約時に事務手数料などを支払う場合もあります。
なお、同じ場所で新たに新電力を使い始める際は、現在使用している電力会社への解約届けなどは不要です。原則、切り替える先の事業者が一括して手続きを行います。
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