投稿日:2025/02/28
更新日:2025/02/28
ガスの情報館
普段何気なく使用しているガスには、都市ガスとプロパンガスの2種類があります。都市ガスは、都市部を中心とした一部地域で利用できるガスで、他にもさまざまな特徴があります。引越しのタイミングで初めて都市ガスを利用する方や、何気なく使っていたガスが都市ガスの場合、どのようなものか気になる方も多いでしょう。
そこで本記事では、都市ガスの基本情報からプロパンガスとの違い、都市ガスを利用するメリット・デメリットをご紹介します。自分がどちらのガスを利用しているのかを見分ける方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2025年2月時点の情報です
目次
都市ガスは主に人口の多い都市部で利用できる、メタンを主成分とした天然ガス(LNG)です。その他にもエタンやプロパンなどが含まれています。都市部の地下に張り巡らされたガス管を通して供給されるため、住宅が密集していない地方部では利用が難しいです。一方で、ガス管さえあればガスを供給できるので、人件費や配送費などがかからず料金が安く抑えられる傾向にあります。
都市ガスの事業者は全国に200社ほどあり、対応可能エリア内での普及率は50~60%ほどです。原料のほとんどを輸入に頼っているため、港湾地域に作られたLNG受入基地を中心に供給エリアを広げています。
※参考:一般社団法人日本ガス協会.「都市ガス事業について」.https://www.gas.or.jp/about/ ,(2025-02-06).
都市ガスにはいくつか種類があり、以下のように7グループ13種類に分けられます。
規格 | 熱量 |
13A | 10,000~15,000kcal(㎥) |
12A | 9,070~11,000kcal(㎥) |
6A | 5,800~7,000kcal(㎥) |
5C | 4,500~5,000kcal(㎥) |
L1(6B、6C、7C) | 4,500~5,000kcal(㎥) |
L2(5A、5B、5AN) | 4,500~5,000kcal(㎥) |
L3(4A、4B、4C) | 3,600~4,500kcal(㎥) |
主な都市ガスの種類は13Aと12Aです。ご覧のように、ガスの種類は数字とアルファベットを用いて表されます。数字はガス1㎥当たりの発熱量を指し、例えば13Aと12Aを比べると、13Aの方が発熱効率が良いと分かります。またアルファベットはガスの燃焼速度を表しており、AからCまでで遅い・普通・速いという順番になっています。13Aも12Aも構成される成分はほとんど変わらないため、どちらにも対応可能なガス機器が多いです。
※参考:東京ガス.「都市ガスについて 都市ガスの種類・熱量・圧力・成分」.https://www.tokyo-gas.co.jp/network/gas/shurui/index.html ,(2025-02-06).
※参考:湯ドクター.「ガスの種類について」.https://www.u-doctor.com/guidance/kind_gass.html ,(2025-02-06).
都市ガスとプロパンガスには、いくつか違いがあります。以下の表をご覧ください。
都市ガス | プロパンガス | |
原料 |
|
|
特徴 |
|
|
供給方法 | 都市部の地下にあるガス管を通じて供給される | 液化石油ガスが入ったガスボンベを従業員が配送する |
都市ガスは原料が天然ガスなのに対して、プロパンガスは石油ガスです。
両者は液化するまでの冷却温度や、液化した後の体積が異なります。都市ガスの方が体積が小さくなるため、長期保存や輸送がしやすいのが特徴です。プロパンガスも小さくなるものの都市ガスに比べると体積が大きくなります。
発熱量が都市ガスの2倍とパワフルなのも特徴です。ただし、家庭用のガス機器は火力が決まっているため、都市ガスでもプロパンガスでも火力の強さは同じになります。
ここからは、都市ガスのメリット・デメリットをご紹介します。何気なく利用している都市ガスにどのような特徴があるのかを確認しましょう。
都市ガスのメリットは、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
都市ガスのメリットの一つに、配送コストがかからない点が挙げられます。
先述した通り、都市ガスは地下のガス管を通じて供給されるので、ガスボンベを運ぶ必要がありません。そのため都市ガスは配送費がかからず、プロパンガスに比べて費用を抑えられます。
ガス導管を設置するための初期費用はかかるものの毎月支払うわけではないため、結果的にコスト削減になります。
都市ガスは2017年4月のガス小売自由化以降、企業間の価格競争が活発になった影響から、プロパンガスに比べて比較的安い料金で利用できます。
もともと都市ガスは公共料金だったため、経済産業大臣が認可した料金設定で運用されていました。自由化以降は、多くの事業者が参入し、お得なプランや新メニューを用意してガスを提供するようになりました。都市ガスは都市部を中心とした人口密度の高い場所で利用されるため契約者が多く、企業間での価格競争が起こりやすいのが特徴です。そのため都市ガス利用者は、ご自身のガスの使い方に合った多くのメニューの中から、よりお得なサービスを選ぶといったメリットを享受できます。
都市ガスは空気よりも軽いのが特徴で、ガス漏れが起こってもすぐに対処できるのがメリットです。空気よりも軽いガスは、漏れ出た際に天井にたまります。そのため窓を開ければすぐにガスを外に逃がせます。
なおプロパンガスは空気よりも重いため、ガスが漏れた場合はほうきで室外へ掃き出すといった対処が必要です。警報器も天井ではなく、床の方に設置されます。
都市ガスはガスボンベではなく地下のガス管を通して供給されるので、自宅に設置場所を設ける必要がありません。
一方プロパンガスは、自宅の外に常時2~4本ほどガスボンベを置いておけるスペースが必要です。また屋外かつ直射日光の当たらない、プロパンガスの金属製の容器が腐食しない、水はけの良い場所に設置するといった基準があります。
都市ガスはメタンをはじめとする天然ガスでできているため、石油や石炭由来のガスに比べて環境に優しいエネルギーです。天然ガスは燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ない他、硫黄酸化物やばいじんなども発生しません。また各家庭へガスを供給する際にトラックを使う必要がないため、輸送にかかる二酸化炭素量もプロパンガスより少ないです。
個人でカーボンニュートラルに取り組めるメニューを用意しているガス会社を選べば、さらに環境への負担を抑えられます。
都市ガスには多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。
都市ガスを利用する場合は、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。
都市ガスは、利用できる地域が限られるのがデメリットです。住宅が密集していない地方や山間部にはガス管が通っていないことが多いので、プロパンガスを利用することになるでしょう。
新築住宅で都市ガスを導入する際や、プロパンガスから都市ガスに切り替える場合は、初期費用が高くなる可能性があります。都市ガスの導入には専用のガス管を道路から自宅に通すための工事が必要になり、その場合の費用は10万~50万円ほどが相場です。
またプロパンガスから都市ガスにする場合、両者は熱量や圧力が異なるため、ガス機器や部品を交換する必要もあります。どの程度大規模な工事になるのかにより異なりますが、機器や部品の交換だけで数万円程度はかかるでしょう。
都市ガスは災害時の復旧に時間がかかる恐れがあるのも、デメリットの一つです。
万が一ガス管に異常が発生した場合、都市ガスの供給は止まってしまいます。プロパンガスのように人力で届ければすぐに使えるようになるわけではないため、復旧までの備えをしておく必要があります。
また地下にあるガス管はつながっているため、災害による修繕のために大規模な工事が必要になる場合、多くの世帯に影響が出るでしょう。
現在自宅で使用しているガスの種類が分からない場合は、以下を確認してみましょう。
ガス機器に貼られているシールや、検針票の内容を確認してみましょう。ガス機器のシールに「13A」「12A」などと記載されている場合は、都市ガスです。プロパンガスの場合は「PL」「プロパンガス用」などの記載があります。また検針票に記載されている使用場所番号が10桁の場合は都市ガス、17桁の場合はプロパンガスです。
他にも、ガスメーターやガスホースの見た目で見分けられます。ガスメーターに液晶表示がなければ都市ガス、あればプロパンガスです。ガスホースは、都市ガスの場合は白、プロパンガスの場合はオレンジになっています。
さらに、ガスボンベの有無や、警報器の位置でも確認できます。住宅の外にガスボンベがなければ都市ガス、あればプロパンガスです。警報器で見分ける際は、天井にあれば都市ガス、床の近くにあればプロパンガスだと分かります。
都市ガスは、住宅が密集している都市部で利用されるライフラインです。地下に張り巡らされたガス管を通じて供給されるため、プロパンガスのようにガスボンベを設置する必要がありません。ガスボンベを配送するための費用がかからないことに加えて、ガス自由化による価格競争によって、比較的安く利用できるのが特徴です。
一方で住宅が集まっていない地方では利用できないことや、初期費用がかかるといったデメリットもあります。都市ガスを利用する際は、お得に利用できるメニューを用意しているガス会社や、電気とガスを組み合わせれば安くなる会社などを探してみるのがおすすめです。
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