卒FIT後の売電収入はどうなる? 太陽光発電のFIT期間満了後の賢い選択肢をご紹介

投稿日:2022/11/16

更新日:2024/11/19

でんきの比較

10kW未満の太陽光発電の場合、FIT制度の固定価格で売電できる期間は10年間と定められています。卒FITとなる11年目以降は、売電を続けるか、売電をやめて全量自家消費にシフトするかを選べるため、迷う方も少なくありません。

本記事では、卒FIT後の賢い選択肢をご紹介します。それぞれの選択肢の売電収入・電気料金の節約効果をシミュレーションで分かりやすく比較しているので、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は2024年8月時点の情報です

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10kW未満の太陽光発電は10年でFIT制度が終了

先述した通り、10kW未満の太陽光発電の場合、FIT制度が適用されるのは開始から10年間です。FIT制度の終了を迎えることを卒FITと言います。FIT制度の開始年度に応じた終了年度は以下のとおりです。

【FIT制度開始年度終了年度】

FIT制度(太陽光発電余剰電力買取制度)開始年度 終了年度
2009年度 2019年度
2010年度 2020年度
2011年度 2021年度
2012年度 2022年度
2013年度 2023年度
2014年度 2024年度
2015年度 2025年度
2016年度 2026年度
2017年度 2027年度
2018年度 2028年度
2019年度 2029年度
2020年度 2030年度
2021年度 2031年度
2022年度 2032年度
2023年度 2033年度
2024年度 2034年度

FIT制度の前身である「太陽光発電余剰電力買取制度」は2009年11月に開始され、2019年11月より順次終了を迎えています。


※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「卒FITの準備は、もう、お済ですか?」 .
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2021_fit_after.pdf , (2024-02-15) .

2019年以降の卒FIT件数の推移

2019年以降の卒FIT件数の推移

2019年以降、多くの住宅用太陽光発電が卒FITを迎えています。

【2019年以降の卒FIT件数】

FIT制度開始時期 卒FIT時期 卒FIT件数 卒FITの累計
2009年(11月〜) 2019年(11月・12月) 53万件 53万件
2010年 2020年 20万件 73万件
2011年 2021年 27万件 100万件
2012年 2022年 34万件 134万件
2013年 2023年 31万件 165万件

2023年には、累計の卒FIT件数が約165万件に達しました。卒FITを迎えた太陽光発電は、売電を続けるか、全量自家消費に切り替えるかのどちらかを選択することになります。

※参考:経済産業省 . 「住宅用太陽光発電設備の FIT買取期間終了に向けた対応」 . https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_03_00.pdf , (2018-09-12) .

卒FIT後は買取価格が下がる

卒FIT後は電気の買取が固定価格ではなくなり、買取単価が下がります。例えば、2009~2013年度のFIT制度の買取価格は以下のとおりです。

【FIT制度の買取価格】

​​FIT制度(太陽光発電余剰電力買取制度)開始年度 FIT制度の買取価格(/kWh)
2018年度 28円 (26円 ※出力抑制対応義務なし)
2017年度 30円 (28円 ※出力抑制対応義務なし)
2016年度 33円 (31円 ※出力抑制対応義務なし)
2015年度 35円 (33円 ※出力抑制対応義務なし)
2014年度 37円
2013年度 38円
2012年度 42円
2011年度 42円
2010年度 48円
2009年度 48円

対して、2024年2月現在のエリア電力会社による卒FIT後の買取価格は、以下のとおりです。

【エリア電力会社による卒FIT後の買取価格】

エリア電力会社 卒FIT後の買取単価(/kWh)
東京電力 8.5円
北海道電力 8円
東北電力 9円
中部電力 7円
北陸電力 8円
関西電力 8円
中国電力 7.15円
四国電力 7円
九州電力 7円
沖縄電力 7.7円

2023年度に卒FITを迎えた方のFIT期間中の買取価格である38円と比べると、2024年2月現在のエリア電力会社による卒FIT後の買取価格は30円近く安くなるため、卒FIT後もそのままエリア電力会社に売電をし続けていると、売電収入が大幅に下がってしまうことが分かります。

売電価格が下落する理由は、買い取りに再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が充てられなくなるからです。再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの普及のために、電気を使用する全ての家庭や企業から集められているお金のことです。電気使用量に応じて、毎月の電気料金と一緒に支払っています。

FIT制度適用期間中は、電気の買い取りに再エネ賦課金が充てられるため、買取価格が高く設定されています。しかし、卒FIT後は再エネ賦課金の割り当てがなくなるため、各電力会社が設定した買取価格となり、単価が下がるのです。

※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .

卒FIT後の3つの選択肢

卒FIT後の3つの選択肢

卒FIT後の主な選択肢は以下の3つです。

  • 売電継続
  • 売電先の切り替え
  • 自家消費

卒FIT後に太陽光発電の設備を撤去するという選択も考えられますが、せっかく費用をかけて導入した設備を廃棄することに抵抗を感じる方が多いでしょう。太陽光発電は卒FIT後も売電収入を得たり、自宅で使う電力を確保したりするのに役立ちます。ここからそれぞれの選択肢のメリットや注意点を解説するので、ぜひ、卒FIT後の参考にしてください。

売電継続

売電継続は、FIT制度の適用期間中に契約していたエリア電力会社への売電を継続する方法です。

売電を継続する場合の買取価格

先述したとおり、卒FIT後にエリア電力会社への売電を継続する場合は、FIT制度適用期間中と比べて電気の買取価格が大幅に下がります。参考として2024年2月現在のエリア電力会社の買取価格と2013年度のFIT制度の売電価格を表にまとめました。

【売電を継続する場合の買取価格】

エリア電力会社 買取価格(/kWh) 2013年度のFIT制度の売電価格(/kWh)
東京電力 8.5円 38円
北海道電力 8円
東北電力 9円
中部電力 7円
北陸電力 8円
関西電力 8円
中国電力 7.15円
四国電力 7円
九州電力 7円
沖縄電力 7.7円

仮に、東京電力に1年間で3,000kWhの電気を売電していたとすると、2013年度からのFIT制度適用期間中なら年間の売電収入は114,000円ですが、卒FIT後は25,500円と大きく下がってしまうのです。

※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「買取価格・期間等(2012年度~2022年度)」 . https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html , (2024-02-15) .

卒FIT後の太陽光発電の売電方式


太陽光発電の売電方式は「余剰売電」と「全量売電」に分かれます。

しかし、低圧区分に当たる50kw未満の低圧容量の太陽光発電は、一部例外を除き、基本的には余剰発電の選択肢しかありません。これは、卒FITを迎えた後も同様です。過去には全量売電ができるケースもありましたが、2021年にFIT制度の内容が大きく変わり、比較的規模の小さな太陽光発電では全量売電を選択できなくなりました。制度変更の背景には「余剰売電の方が、省エネルギーの促進や再生可能エネルギー発電促進賦課金の減少につながる」という、国の思惑があります。

余剰売電と全量売電の違い

余剰売電とは、太陽光発電で作った電力をまずは自家消費し、余った電力のみを電力会社に売る方法です。先述の通り50kW未満の太陽光発電では、原則余剰売電が適用となります。一般的な住宅での太陽光発電であれば、ほとんどのケースで余剰売電を行うことになるでしょう。

一方の全量売電は、太陽光発電で作った電力をすべて電力会社に売ってしまう方法です。全量売電では発電量と売電量が連動するため、安定した売電収入が見込めるようになります。

売電を継続するメリット

売電を継続するメリット

FIT制度適用期間中と同じ電力会社に売電を継続するメリットは、新たな売電先を探す手間がかからない点でしょう。手続きも不要か、必要な場合でも継続手続きのみなど、簡単に済むことが多いです。

複数のプランを用意しているエリア電力会社の場合は、プランの選択が必要です。

売電を継続する際の注意点

売電を継続する際の注意点は、契約が自動更新されるからといってそのままにしておくと、損をしてしまう可能性がある点です。放っておくと買取価格は大幅に下がり、よりお得なプランを選択する機会を逃してしまう可能性があります。売電を継続するならプラン選びが重要です。複数のプランが提供されている場合、プランによって買取単価や契約条件が異なる可能性があるため、契約しているエリア電力会社のWebサイトやパンフレットなどに目を通し、よりご自身のライフスタイルに合うプランがないか確認してみてください。

また卒FIT後は自動継続ではない電力会社の場合、継続手続きを行わずに放置していると、電気を無償で提供し続けることになるため注意が必要です。どの事業者とも売電契約を結んでいない状態では、余剰電力の買取者が不在となり、エリア電力会社が無償で引き受けることになります。

売電を継続する際の手続き方法

売電を継続する際の手続き方法は、エリア電力会社によって異なります。先述したとおり、自動継続となる場合もあれば、卒FIT後に改めて契約し直さなくてはならない場合もあり、必要な手続きはさまざまです。卒FIT後のエリア電力会社との売電契約は、1年単位の自動更新となっていることが多く、契約期間中に新電力に乗り換えたとしても、違約金は発生しないのが一般的です。

売電先の切り替え

卒FITを迎えた後は、電気の買取業者を自由に選べるため、売電先をエリア電力会社から切り替えることができます。多くの新電力が「卒FIT買取プラン(余剰電力買取サービス)」を提供しており、売電先の選択肢は多いです。

売電先を切り替える場合の買取価格

売電先を切り替える場合、契約する事業者によって買取単価が異なります。例としてエリア電力会社と3つの新電力の買取単価を表にまとめました。

【新電力の買取単価】

エリア 直近のエリア電力会社の買取単価(/kWh) エネクスライフサービスの買取単価(/kWh) 丸紅新電力の買取単価(/kWh) ENEOSの買取単価(/kWh)
関東エリア 8.5円(東京電力) 12.5円 11円 11円
北海道エリア 8円(北海道電力) 11円 11円 11円
東北エリア 9円(東北電力) 10円 11円 11円
中部エリア 7円(中部電力) 10.5円 10円 10円
北陸エリア 8円(北陸電力) 8.5円 10円 10円
関西エリア 8円(関西電力) 10円 10円 10円
中国エリア 7.15円(中国電力) 10円 10円 10円
四国エリア 7円(四国電力) 8.5円 10円 10円
​​九州エリア 7円(九州電力) 7.1円 9円 8円
沖縄エリア 7.7円(沖縄電力) 9.5円

新電力の買取単価は、エリア電力会社と比較して高めに設定されています。卒FITを迎えた後は、そのままエリア電力会社への売電を継続するよりも、売電先を切り替えた方がお得になります。卒FIT後に少しでも多く売電収入を得るには、電気をより高く買い取ってくれる事業者を探すのがおすすめです。

※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .

※参考:丸紅新電力 . 「卒FIT買取サービス」 . https://marubeni-st.co.jp/lp/sharp , (2024-02-15) .

※参考:ENEOS . 「ENEOS太陽光買取サービス」 . https://www.eneos.co.jp/solar-kaitori/ , (2024-02-15) .

売電先を切り替えるメリット

売電先を切り替えるメリット

売電先を切り替えるメリットは、売電収入を増やせる点です。先述した通り、新電力に売電すれば、エリア電力会社への売電を継続するよりも、電気を高く買い取ってもらえるケースが多いです。

よりお得なセットプランなどを用意している事業者も多く、売電と併せて電気の契約や蓄電池の購入を行うことで、買取単価が数円アップすることがあります。また電気を売らずに寄付することで、地域の特産品などがもらえるプランや、電力会社独自のポイントや他社のポイントが付与されるプランなど、金銭以外の独自の特典を提供している事業者もあります。

例えば、株式会社エネクスライフサービスの「太陽光電力買取サービス」では、以下の4つのプランをご用意しています。

  • 太陽光電力買取サービス:卒FITのみ
  • 卒FITでんきプラス:卒FIT×TERASELでんき
  • 卒FIT蓄電池プラス:卒FIT×蓄電池
  • 卒FITWプラス:卒FIT×TERASELでんき×蓄電池

業界No.1水準の高額買取(※)に加え、TERASELでんき、もしくは、蓄電池のどちらか一方と卒FIT買取サービスをセットでご契約いただくと、買取単価が+1円/kWhになります(卒FITでんきプラス、卒FIT蓄電池プラス)。2つともご契約いただいた場合は+2円/kWhです(卒FITWプラス)。

※2024年6月当社調べ(付帯契約やキャンペーンなどは含まれておりません)

売電先を検討する際は通常の買取単価だけでなく、さまざまなプランを確認してみてください。

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売電先を切り替える際の注意点

売電先を切り替える際は、対応エリアや契約条件を必ず確認しましょう。卒FIT後は売電先自由に選べますが、太陽光発電設備を設置しているエリアによって、契約できる事業者に制限があります。各エリアの売電可能な事業者は資源エネルギー庁のサイトに掲載されていますので、売電先を探す際の参考にしてみてください。

>売電できる事業者一覧はこちら

プランの中には、特定の条件に当てはまる人しか加入できないものや、電気の契約や蓄電池の購入が前提のものもあります。セットプランを希望しない場合は、電気の買取のみのプランを探しましょう。

買取単価そのものはもちろん、その買取単価が適用される条件や期間、また支払い方法や支払いサイクル、契約期間、解約時の違約金の有無なども忘れずに確認してください。売電収入の支払いに関しては、現金振込で受け取れる契約や、電気料金と相殺される契約などがあります。現金を受け取りたいなら前者、電気料金を節約したいなら後者がおすすめです。

>【地域別】卒FITしたら売電したいおすすめ事業者は? 余剰電力買取プラン比較【2024年3月最新】

売電先を切り替える場合の手続き方法

売電先を切り替える場合の一般的な手続き方法は、以下のとおりです。

  1. 資源エネルギー庁のWebサイトなどを利用し、太陽光発電設備を設置しているエリアで利用できる事業者を確認する
  2. 現在売電契約をしている電力会社から発行された「購入電力量のお知らせ」を用意する
  3. 乗り換えたい事業者のWebサイトにアクセスし、契約者名義や「購入電力量のお知らせ」記載の受電地点特定番号・顧客番号、振込先情報などを入力して売電契約を申込む
  4. メールや書面などで契約内容を確認する
  5. 切り替え手続きが完了すれば売電が開始される

エリア電力会社から別の電力会社に切り替える際は、基本的には解約手続きは必要ありません。新たな売電先と売電契約をすれば、自動的に切り替わるのが一般的です。売電先を切り替えても違約金や手数料、工事費などは発生しないケースがほとんどなので、切り替えやすいでしょう。

自家消費

自家消費とは太陽光発電で作った電気を売却せず、自宅で利用することです。卒FITを迎えた後は売電をやめ、自家消費に切り替えるという選択肢もあります。自家消費をすると売電収入は得られなくなるものの、大幅な電気料金の節約効果が見込めます。

自家消費のメリット

自家消費のメリット

自家消費の最も大きなメリットは、電気料金の削減につながる点です。太陽光発電で作った電気を自宅で消費することで、その分、電気の購入量を減らすことができ、電気料金を抑えられます。近年は燃料価格の高騰から電気料金が高騰しており、売電価格よりも電気料金の方が単価が高いため、自家消費による電気料金の削減効果はより大きくなっています。

またCO₂の排出削減につながる点もメリットとして挙げられます。現在主力の火力発電は、化石燃料を燃やして電気を作りますが、発電時に多くの温室効果ガスを排出することが問題視されている他、化石燃料の枯渇も懸念されています。太陽光発電は、発電時にCO₂を排出しないクリーンな電気のため、自宅で使う電気の一部または全部を太陽光発電で賄えば、地球温暖化の防止や環境保全にも貢献できます。

自家消費を前提としていると、災害によって停電した場合でも電気を利用可能です。特に地震や水害などの際は、電柱の倒壊などにより、電力の供給が滞ってしまう可能性が高いです。停電した日のうちに復旧したケースもあれば、2〜3週間と長期にわたって電気が使えなくなった事例もあります。そのような場合でも、普段から太陽光発電の電気を自家消費していれば、比較的いつもの生活に近い状態で過ごせるでしょう。

自家消費をする際に導入を検討したい機器

太陽光発電で作った電気を自家消費するなら、導入を検討したい機器があります。以下の機器を太陽光発電と組み合わせればより効率よく自家消費でき、電気料金の削減効果や停電時の備えも、よりレベルが上がります。

  • 蓄電池
  • エコキュート
  • EV

3つの機器は用途がさまざまなので、ライフスタイルに合わせて導入するのがおすすめです。

蓄電池

蓄電池は電気をためたり、供給したりできる二次電池です。蓄電池を導入すれば、日中に太陽光発電で作った電気を蓄電池に蓄えておくことができ、発電ができない夜間や悪天候の日に、その電気を使用することができます。電気の購入量が減るため、電気料金を抑えられます。

蓄電池があれば停電の備えにもなります。先述した通り、大規模な災害時には、電気を含むライフラインが止まるケースは珍しくありません。停電した場合でも、蓄電池に電気が蓄えられていれば、照明や液晶テレビなど1,400W~1,500Wまでの家電製品であれば使えるでしょう。また太陽光発電があるため、日中は家電を使いながら蓄電池の充電もでき、夜間も一定時間家電が使えるため安心です。

蓄電池は、電気を蓄えられる容量が大きければ大きいほど価格が高くなる傾向にあります。自治体によっては蓄電池の購入に対しての補助金を設けているところもあるため、導入の際には、活用できるものがないか確認するとよいでしょう。

エコキュート

エコキュートとは、ヒートポンプ技術を活用した貯湯式の給湯器です。大気中の熱を集めてお湯を作るため電気ヒーターは使用せず、お湯を作るのにかかる電気料金が安く済むのが特長です。

エコキュートは夜間にお湯を沸き上げるタイプのものが多いですが、日中に太陽光発電で作った電気を使用してお湯を沸き上げるタイプのものもあります。このタイプは、発電した電力をより無駄なく自家消費できる他、暖かい日中にお湯を沸き上げ、またそのお湯を使用するまでの時間も短いことから、エネルギーのロスが少なくて済むというメリットもあります。

太陽光発電とエコキュートを組み合わせたい場合は、太陽光発電で作った電気を使用できるタイプかを必ず確認しましょう。

EV

EV(電気自動車)とは、ガソリンではなく電気で走る自動車です。バッテリーに電気を蓄えておき、その電気でモーターを動かして走行します。太陽光発電で作った電気でEVを走らせれば、発電時も走行時もCO2を排出しません。

蓄電池の代わりにできる点もEVのメリットです。V2H(Vehicle to Home)という、EVの電気を自宅で使えるように変換するシステムを導入すれば、EVを蓄電池のようにも利用することができ、より自家消費の効率がよくなります。

V2Hを導入する際は、V2H対応のEVであるかどうか、またパワーコンディショナーの取り替えが必要かどうかを必ず確認しましょう。

自家消費の注意点

自家消費の注意点は、蓄電池やEV、V2Hなどの設備がなければ、太陽光発電で作った電気を蓄えておけない点です。電気を蓄えられないと、発電した電気をその瞬間に消費しなければなりません。日中に家を空けることが多い方などは、かえって損をしてしまう可能性があるでしょう。

一方で、蓄電池やエコキュート、EVを導入するとなると、まとまった初期費用がかかります。また定期的なメンテナンスや、一定期間経過後は経年劣化に応じた修理や交換なども必要です。自家消費による電気料金の節約額やランニングコストなども踏まえて、導入を検討しましょう。

自家消費をする場合の手続き方法

自家消費をするための手続き例として、すでに太陽光発電を設置している状態から、後付けの蓄電池を導入する方法を解説します。この場合は変更認定申請の手続きが必要です。変更認定申請は、FIT制度の認定で届け出た内容から変更が生じる際に行います。

変更認定申請は、再生可能エネルギー電子申請のWebサイトから手続き可能です。手続きでは変更認定申請書や太陽光発電の配線図などの必要書類を提出します。手続きや書類の準備が難しく感じられる場合は、太陽光発電や蓄電池の販売業者に相談、代行依頼などが可能です。

3つの選択肢をシミュレーションで比較!

売電継続、売電先の切り替え、自家消費という3つの選択肢をご紹介しましたが、どの選択肢が最もお得なのでしょうか? 以下の3つのシミュレーションを行い、売電収入や電気料金の節約効果を比較してみましょう。

  • 売電を継続する場合の売電収入・電気料金の節約効果
  • 売電先を切り替える場合の売電収入・電気料金の節約効果
  • 自家消費する場合の電気料金の節約効果

シミュレーションの前提条件は以下のとおりです。

【シミュレーションの前提条件】

項目 数値 条件
太陽光設備の発電量 5kW システム容量を5kWhと仮定
年間発電量 5,475kWh 太陽光発電の設置場所を東京駅地点と仮定(年平均日射量は3.75kWh/㎡)
年間平均電気使用量 4,258kWh 環境省公式サイトより
一般的な自家消費率 30% 資源エネルギー庁資料より
蓄電池導入後の自家消費量 70% 蓄電池導入後の自家消費量を70%と仮定
売電単価(売電継続) 8.5円/kWh 東京電力再エネ買取標準プラン
売電単価(売電先の切り替え) 12.5円/kWh エネクスライフサービス(関東エリア)
電気料金単価 36.40円/kWh 東京電力従量電灯B第二段階料金

※参考:環境省 . 「家庭でのエネルギー消費量について | 家庭部門のCO2排出実態統計調査」 . https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/01/ , (2024-02-15) .

※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社 . 「再エネ買取標準プラン|再エネプラン」 . https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/plan/standard.html , (2024-2-15) .

※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社 . 「従量電灯B・C|電気料金プラン|」 . https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old01.html , (2024-2-15).

売電を継続する場合の売電収入・電気料金の節約効果

卒FIT後もエリア電力会社(東京電力エナジーパートナー)への売電を継続する場合の売電収入・電気料金の節約効果は、以下のとおりです。

項目 金額
平均的な年間の電気料金 154,991円
自家消費による電気料金の節約額 59,787円
1年間の売電収入 32,576円
実質の年間の電気料金 62,628円
年間のお得額 92,363円

平均的な年間の電気料金は、年間平均電気使用量に電気料金単価をかけて算出します。
年間の電気料金 = 4,258(kWh) × 36.40(円) = 154,991(円)(1円未満切り捨て)

自家消費による電気料金の節約効果と売電収入を算出するために、年間発電量を自家消費分と売電分に分けます。
自家消費分 = 5,475(kWh) × 30% = 1,642.5(kWh)
売電分 = 5,475(kWh) − 1,642.5(kWh) = 3,832.5(kWh)

自家消費による電気料金の節約額は、自家消費分に電気料金単価をかけて算出します。
自家消費による電気料金の節約額 = 1,642.5(kWh) × 36.40(円) = 59,787(円)

1年間の売電収入は、売電分に売電単価をかけて算出します。
1年間の売電収入 = 3,832.5(kWh) × 8.5(円) = 32,576(円)(1円未満切り捨て)

実質の電気料金は、年間の電気料金から自家消費による電気料金の節約額と売電収入を差し引いて算出します。
実質の年間の電気料金 = 154,991(円) – 59,787(円) – 32,576(円) = 62,628(円)

売電を継続する場合は、年間で92,363円お得になります。

売電先を切り替える場合の売電収入・電気料金の節約効果

売電先をエネクスライフサービスに切り替えた場合の売電収入・電気料金の節約効果は、以下のとおりです。

項目 金額
平均的な年間の電気料金 154,991円
自家消費による電気料金の節約額 59,787円
1年間の売電収入 47,906円
実質の年間の電気料金 47,298円
年間のお得額 107,693円

平均的な年間の電気料金と自家消費による電気料金の節約額は、売電を継続する場合と同様です。

1年間の売電収入は、売電分にエネクスライフサービスの買取単価をかけて算出します。
1年間の売電収入 = 3,832.5(kWh) × 12.5(円) = 47,906(円)(1円未満切り捨て)

実質の電気料金は、年間の電気料金から自家消費による電気料金の節約額と売電収入を差し引いて算出します。
実質の年間の電気料金 = 154,991(円) – 59,787(円) – 47,906(円) = 47,298(円)

売電先をエネクスライフサービスへ切り替えた場合は、年間で107,693円お得になります。売電を継続する場合と比べて、15,000円以上お得になる計算です。

※参考:株式会社エネクスライフサービス . 「太陽光電力買取サービス」 . https://afterfit-itcenex.com/ , (2024-03-25) .

自家消費する場合の電気料金の節約効果

自家消費する場合の電気料金の節約効果は以下のとおりです。前提として蓄電池を導入し、自家消費率が70%、売電分が30%となったと仮定します。また余剰分の売電先は、エネクスライフサービスとします。

項目 金額
平均的な年間の電気料金 154,991円
自家消費による電気料金の節約額 139,503円
1年間の売電収入 20,531円
実質の年間の電気料金 -5,043円
年間のお得額 160,034円

平均的な年間の電気料金は、売電を継続する場合、売電先を切り替える場合と同様です。
自家消費する場合は、発電量の自家消費分と売電分が逆になります。
自家消費分 = 5,475(kWh) × 70% = 3,832.5(kWh)
売電分 = 5,475(kWh) − 3,832.5(kWh) = 1,642.5(kWh)

自家消費による電気料金の節約額は、自家消費分に電気料金単価をかけて算出します。
自家消費による電気料金の節約額 = 3,832.5(kWh) × 36.40(円) = 139,503(円)

1年間の売電収入は、売電分にエネクスライフサービスの買取単価をかけて算出します。
1年間の売電収入 = 1,642.5(kWh) × 12.5(円) = 20,531(円)(1円未満切り捨て)

実質の電気料金は、年間の電気料金から自家消費による電気料金の節約額と売電収入を差し引いて算出します。
実質の年間の電気料金 = 154,991(円) – 139,503(円) – 20,531(円) = -5,043円

自家消費をし、余剰分をエネクスライフサービスへ売電する場合は、年間で160,034円お得になります。実質の年間の電気料金を5,043円上回りました。

ただし、先述したように、蓄電池の導入には初期費用がかかります。容量に応じて価格は異なりますが、本体代金と工事費を含めて90万~250万円程度の予算が必要です。蓄電池の導入を検討する際、初期費用を考慮に入れる必要があります。

卒FITのベストな選択肢は「自家消費+新しい売電先に余剰売電」

先ほどのシミュレーションの結果から、卒FITのベストな選択肢は「自家消費+新しい売電先に余剰売電」だといえるでしょう。

現在は電気料金が高く、逆に、売電価格は安くなっているため、自家消費による電気料金の削減のメリットが大きいです。加えて、CO₂の排出削減や災害時の停電への備えにもなるといったメリットもあります。

その上で、余った電気を売電するスタイルなら、売電収入によって蓄電池やEV、V2Hなどの導入かかった費用の回収を早められるはずです。売電先をエリア電力会社のままにせず、より高く買い取ってもらえる売電先に切り替えれば、売電収入のアップが期待できます。売電先を切り替える際は、売電価格や契約条件などをしっかりと比較検討しましょう。

まとめ

卒FIT後は、売電を続けるのか、自家消費に切り替えるのかを選択することになります。ベストな選択肢は、先述した通り「自家消費+新しい売電先に余剰売電」ですが、すぐに蓄電池やEV、V2Hなどを導入するのが難しい場合は、まずは売電先をエリア電力会社から、少しでも買取価格の高い事業者へ切り替えましょう。

卒FIT後もより多くの売電収入を得たい方は、株式会社エネクスライフサービスの「太陽光電力の買取サービス」がおすすめです。本サービスでは、以下の4つのプランをご用意しています。

  • 太陽光電力買取サービス:卒FITのみ
  • 卒FITでんきプラス:卒FIT×TERASELでんき
  • 卒FIT蓄電池プラス:卒FIT×蓄電池
  • 卒FITWプラス:卒FIT×TERASELでんき×蓄電池

高水準の買取価格を実現しており、例えば、関東エリアの買取単価は卒FITのみでも12.5円/kWhです。卒FITに加えて、TERASELでんき、または、蓄電池のどちらかをご利用の場合は、買取単価が1円アップします。さらに、3つ全てご利用の場合は2円アップします。

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この記事を書いた人

野中 康平
野中 康平マーケティング室 室長
大学在学中、発展途上国でのボランティア活動がきっかけで
伊藤忠エネクスに入社。
入社後は一貫して電力ビジネスに携わり、電力ビジネス領域における大規模システム構築を実現。
電力のスペシャリストとして電力ビジネスの拡大に尽力している。
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